№1788 裁判するなら海外か、日本か?
海外の企業と契約するときにどこで裁判するか決めておく必要がある。これは「管轄の合意」という問題だ(民訴法3条の7)。日本の裁判所か、海外の裁判所か、それが問題だ。
海外との取引ではトラブルになった場合、どこで裁判するかはかなり大きな問題となる。海外の裁判となると費用がかかる。準拠法が海外の法律なのでわかりにくい。弁護士を探すのも一苦労だ。
海外でしか裁判できないとなったら裁判自体をあきらめなければならない。相手は足下をみていやなら裁判しろと交渉上の優位を獲得するかもしれない。これは逆の立場、つまり、相手が日本でしか裁判できないとなれば相手はとても困ることになる。
しかし、一方で問題もある。
海外で裁判しないと強制執行できない場合があるからだ。日本で裁判にかっても、相手が国内に財産がない場合には結局海外の裁判所を通じて執行しなければならない。
これはロシア側と日本側との間で、日本の会社がロシアの会社に石油を提供するという契約があった。そこで、ロシアの会社が石油代の支払いを求めて日本の会社に訴えを提起したものだ。
しかし、契約書にはロシアの裁判所を専属管轄するという合意があった。つまり、お互いもめごとはロシアの裁判所に提起するという約束だったのだ。ロシアの会社はこの合意に反して日本の裁判所に訴えてしまったので、日本の裁判所はこの訴えを却下してしまった(東京地裁H27.3.27 判タ1421号238頁)。
その結果、ロシアの会社は石油代64万ドルの裁判ができなくなってしまった。
ちなみに、ロシアの裁判所でロシアの会社が勝訴した場合、この判決が日本で執行できるかと言えば、単純ではない。日本とロシアは相互保証(民訴法118条4号)がないため、執行判決を得ることができない(民事執行法24条3項)。かわいそうな結果になるのだが、そもそも、こんな契約を起案したのはロシアの会社なので自業自得というところかな。
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