№1897 裁判を回避する債権回収
私たちにとって裁判は最後の手段だ。相談があった場合、いかに裁判を回避して債権を確保するかが大きな課題だ。
1. 債務名義をとる
判決書は債務名義の典型例だが、そのほかにも債務名義はある。たとえば公正証書などがそうだ。これは公証人役場で作成する契約書のことを言う。契約書なのであらかじめ合意していればすぐにできる。同じようなものに即決和解というものがある。これもあらかじめ合意しておいて裁判所で和解調書を作ってもらう方法だ。
こうした判決文以外の「債務名義」は便利なのだが、文書をきちんとしておかないと執行ができなくなってしまうので注意を要する。条件などをつけるととてもややこしいのでできるだけ避ける。また、執行するには常に文書を手渡しておく必要があるので、あらかじめ交付しておくことは必須だ。
2. 担保をとる
抵当権などは典型的だが、最近はいろいろな担保がある。抵当権設定登記は高額なので、時には仮登記ですますことがある。この場合、信用不安がある場合には本登記できるよう、仮登記設定契約はしっかり準備しておく必要がある。
しかし、抵当権実行はけっこうめんどくさい。譲渡担保とか、所有権留保とか執行手続きが省略できるような担保も考慮する必要がある。
最近は債権を担保にするということも利用されつつあるようだ。債権を担保にとる場合、債権者にその旨通知しなければならない(民法364条)。しかし、債権者というのは顧客だったりすることが多いのでそれを質入れするなどといった通知は信用不安を招くのでなかなかできない。しかし、最近は債権譲渡登記制度ができ、債権者に知らせる必要がなくなった。この場合、債権をかなりしっかり特定する必要がある。
動産類、たとえば在庫を担保にいれることもできる。
3. 法定担保権を利用する
たとえば留置権というのがある。
お金を払ってくれないので、現在相手から預かっているものを留置する、返さないでよいという権利だ。会社間の取引では商業留置権というのがあって、たとえば代金を支払うまで金型を返さないというようなやりかたがある。
先取特権という聞き慣れない権利もある。
たとえば、売買代金については、売買の対象になった物から優先的に返済を受ける権利がある。これはさらに物上代位といって、転売代金を抑えることもできる。難しいので、売買代金が未払いの場合は弁護士に相談すると覚えておけば良い。
このほかにもいろいろ先取特権があって、弁護士もあまり使い方を知らない方法がある。
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