№1701 ソースコードの秘密管理性
IT関係の場合、社員の転職とともに会社の重要な情報が他社に移ってしまうことがある。社員が独立すると前の会社と同じようなソフトウェアを開発し、同じ顧客に売りつけることある。こうした問題はIT業界では特に顕著に発生する。
電子データの特徴は完全な複製・移動ができるところにある。情報管理は難しい。
また、個々の電子情報は単純な数字の羅列、一般的な命令方式に分解できてしまう。オリジナリティを発揮しているか箇所を特定することが難しい。著作権での保護はかなり限定的だ。
さらに、プログラムの方法は一種のノウハウにかかわるもので、個人的ノウハウに属する部分もある。たとえ前の職場で知ったノウハウでもそれは前の職場に専属するという訳では必ずしもない。個人のキャリアの一つになってしまう。
こうした事情で、データ管理は法的管理という点でもかなり専門的だ。法律的な専門性があることが理解されていないと裁判では負けてしまう。法律的に注意したつもりでも裁判では負けてしまう。
ソースコードのような営業上の秘密の最たるものでも勝つことが難しい。
大阪地裁の事例は元課長、開発技術者とともに独立し、類似ソフトウェアを開発販売が争われた。会社側はソースコードを利用した点で、不正競争防止法3条1項、2項を根拠にソフトウェアの差し止め、廃棄、損害賠償請求などを求めた。
「本件において営業秘密として保護されるのは、本件ソースコードそれ自体であるから、たとえば、これをそのまま複製した場合や、異なる環境に移植する場合に逐一翻訳したような場合が『使用』に該当する」
つまり、自動車にヘッドライトが正面に2つあるという抽象化されたアイディアをヒントにヘッドライト二つの自動車を作っても不正使用とは言えない。まるごとまねないと不正使用ではないというところか。
データ管理などは通産省も研究していていろいろ発表されている。かなりお金はかかるが、そこそこ大きなソフトウェア会社は法律専門家とともに本格的にデータ管理システム構築しておく必要がありそうだ。
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