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№1646 マタニティハラスメント その2

№1646 マタニティハラスメント その2

 最近マタハラに関する最高裁が出された非常に重要なので引き続き紹介したい(H26.10.23)
 妊娠した場合に,労働者が軽易な作業を求めた場合には応じなければならない(労基法65条3項)。
 かと言って,妊娠や出産を理由にした労働者に対する,労働条件の不利益変更は禁止されている(雇用均等法9条3項)。

 しかし,最高裁は次の事情があれば不利益な変更は許されるとしている。

  ① 労働者の「自由な意思」に基づく同意
  ② 業務上の必要から特段の事情がある場合。

 ここでは簡単に書いているが,①,②の内容はかなり厳しい。
 「自由な意思」については別の記事を参考にしてほしい。

 ②の業務上の必要から認められる「特段の事情」というのは何だろうか。
 最高裁は次の要素に分けている。
  a) 業務上の必要性の内容,程度
  b) 労働者の有利又は不利な内容,程度
  c) 法の趣旨及び目的に実質的に反するか

 業務上の必要性の内容,程度と言ってもまだわかりにくい。
 最高裁の事例は妊娠,出産時に軽易な作業の職場に移したところ,副主任の地位から降格した事例だが,これに沿って判断すると次の要素が考慮されることになる。

   a) 当該労働者の転換後の業務の性質や内容
  b) 転換後の職場の組織や業務体制
  c) 人員配置の状況
  d) 当該労働者の知識や経験
  e) 当該労働者の意向
 
 これらの要素もなんだか抽象的で結局なんなんだと言いたくなるかも知れない。これらの要素は結局,経営者側がどこまで努力しなければならないかを述べている。中小企業の場合,軽易な作業に転換すると言っても限界がある。その努力をどこまでしたか,その努力の1つに労働者との話し合いもあるということになる。

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