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№1917 同一労働同一賃金をどう判断するか

№1917 同一労働同一賃金をどう判断するか

1. 同一労働同一賃金に向けて法整備が進められている
 政府は同一労働同一賃金政策を推し進めようとしている。これは同じ仕事をしていれば同じだけ支払わなければならないとする考え方だ。政府は現在正規雇用と非正規雇用との格差是正のための法整備を進めている。

2. 長澤運輸事件
  法律の世界でも同一労働同一賃金に関する重要判例が議論を呼んでいる。
    長澤運輸はバラセメント運送などを業務とする会社だが、60才を定年とし、定年後は継続雇用制度を採用している。この制度に基づき定年退職後、Xは嘱託社員として1年の有期雇用契約を締結した。嘱託なので定年前の79%の賃金となる。

  嘱託とは言え、仕事の内容は変わらない。これが無期雇用契約と有期雇用契約との間との差別を原則として禁じている労働契約法20条に違反しているのではないかというのが本件の争点である。

3. 賃金格差が不合理かどうか
  嘱託は定年後、有期雇用という期間の定めによって賃金が異っている。
    この法律は次の事情を考慮して不合理かどうかを判断すべしとしている。
  ① 労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度
  ② 当該職務の内容及び配置の変更の範囲
  ③ その他の事情

4. 継続雇用制度の採用
  一審判断(平成26年5月13日、判タ1430号217頁)
  長澤運輸事件では仕事の内容は同じであるため、①、②からいうと賃金差別に合理性はない。高齢者雇用安定法に基づく継続雇用制度を採用した事情は合理性判断の要素たり得ないとしている。そのため、定年後の賃金格差を違法であるとした。

  控訴審判断(平成28年11月2日、判タ1432号77頁)
  一方、控訴審は業務内容は同じであるため、①、②の点からは格差の合理性は認められないとした。しかし、定年後の再雇用制度は法に基づいて、若年労働者と高齢者労働者のワークシェアリングを実現するものであること、全国的に格差ある取り扱いが定着していることから、③の観点から合理性があるとした。
  
5. 経営者は格差是正問題に取り組むべき
  一般に外形上同じ労働をしていながら、期間に関係して賃金格差がある場合は労働契約法20条違反とされる。雇用側は格差の合理性を説明できなければ違法とされてしまう。どのような点から合理性を説明するかについては私の次のブログ記事を参照されたい。


  本来合理性があるかどうかは労働契約の個別的な解釈によって決められる。全国的に行われているからと言っても、全国的に不合理な事態があればやはり個々の労働契約は不合理ということになるだろう。高裁判決はもとより経営者側に有利な判断であるが、最高裁判断が出るまでは安易に高裁判断に従うわけにはいかない。

  経営者としてはやはり格差の是正に努めるべきだろうし、格差がある場合には合理的に説明できるよう、就業規則、労働契約などを整備する必要がある。

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