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№1221 中国事業再編と破産法

№1221 中国事業再編と破産法
 社会主義計画経済のもと中国には本来私企業というのは余り考えられていなかった。改革開放政策以降徐々に自由化が進み、今日の情況にまで至っている。

 企業は国営など公の企業が中心であるため、仮に経営悪化があったとしても国家や地方政府からの何らかの援助がされていた。企業が倒産し、失業者が発生するというのは社会主義国家にはあってはならないと考えもあったようだ。

 しかしながら、社会主義経済下であっても企業は実際には倒産するし、失業も存在する。企業が倒産した場合には自由主義的な経済政策が取り入れられるようになれば倒産企業についての公平かつ平等な処理というのも求められることになる。

 こうした事情を受けて、中国破産法は2006年8月27日に「中華人民共和国企業破産法」として制定され、2007年6月1日から施行された。中国破産法法律施行以降破産案件の数は年々増加しているようだ。現在では6000件が受理されているという。


 新破産法は適用対象を外商投資企業、有限責任会社、株式会社、国有企業を含む中国において設立された全ての企業法人に広げた。中国破産法の構造はだいたい似ているが、日本法の民事再生や和議も合わせて規定されている点や、企業に限定されている点で趣きを異にする。中国では現時点では個人破産は認められていない。

  破産手続きの概略 → http://www.kuroda-law.gr.jp/pdf/china/ils_087.pdf 

 中国新破産法が実際にどにように実務的に活用されるかは必ずしもよくわからない。日本であれば、破産によって企業は消滅する。事例によっては事業再生やM&Aに活用されることもある。

 しかし、中国では破産にともなってどのようなビジネス戦略が可能かはいろいろ検討されている最中のようだ。

 例えば、中国破産法7条2項は「債務者が債務の弁済期に弁済できないとき、債権者は、人民法院に、債務者に対する重整または破産清算を行うよう申立てることができる。」と定めており、債務不履行があると債権者は破産申立をすることができる。

 債務不履行会社に対して、債権者が積極的に破産攻勢をしかけてくるということも考えら得る。

 NBL1006号73頁にはこうした中国破産法をめぐる事例が紹介してある。紹介事例は債権会社が相手の債務不履行を理由に、相手方会社を破産するべく申請したという事例だ。受理の効力自体が争われ、一審法院は受理を否定し、二審法院は債務超過状態を認定して破産申請を受理するよう命じている。