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№996 暴力団の不当介入

№996 暴力団の不当介入
 企業は暴力団との関係をつくってはいけない。暴力団の関係者となんらかの関係があることが何か自分に力があるかのように思っている人がいるがとんでもないことだ。私の事務所ではそのような人とのおつきあいはお断りしている。

 ともかく、暴力団などから不当要求があった場合には弁護士と相談しながらことを進めるのがよい。弱みを握られた経営者がいれば、まず最悪の場合とその場合の対応方法を説明する。その上で覚悟を決めてもらう。この覚悟を決めれば必ず解決を図ることができる。実際に最悪の場合になることはきわめて少ない。

 暴力団などは飲食店に対して不当要求、いわゆる「みかじめ料」を取り立てることがある。飲食店をオープンするとよく分からない人から花が贈られてきたり、絵が送られたりする。暴力団が全く知らないところに花や絵を贈るというのはめずらしいことで、たいていはどこかで接点があってそれをネタに贈ってくる。それをきっかけに「これからはめんどうをみさせてもらう」などといって、みかじめ料を要求してくる。

 普通は露骨にお金を要求するようなことはない。比較的多いのが機関誌・出版物の購入、広告料が多い。暴力団員から未払い広告料の請求が行われたところ、実態としてはみかじめ料であるとして請求を認めない判決が出た(静岡地裁浜松支部H23.7.20、判タ113頁)。

 この事例は「Mとつるんでどういうつもりだ」「Mという男は丙山兄貴に煮え湯を飲ませた男だから、そんな男と一緒にいるんじゃない」「店つぶすぞ」「お前の店は丙山組で面倒を見るからな」などと脅かされている。

 判決文では次の通り判断している。

 「本件契約は、その形式は広告掲載契約であるが、広告料の実質はみかじめ料である上に、締結過程において暴力団の威力を背景とした威圧的言動が用いられており、契約内容も契約締結過程反社会的なものと言わざる得ない。」

 「そうすると、本件契約は、暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律による禁止の対象となるか否かに関わらず、公序良俗に反し無効である。」

 この公序良俗というのは民法90条が定めているもので次のようになっている。
「公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」

 例えば、めかけにするということで毎月50万円を支給するという契約は民法90条に違反して無効となる。