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№626 定額郵便貯金と相続

№626 定額郵便貯金と相続
  私は何も中小企業のことばかりやっている訳ではない。
 相続、離婚、交通事故、多重債務と普通の弁護士がやっている普通の事件も扱う。
 
 今回は、定額郵便貯金のことで少し勉強したので、記事にする。
 中小企業法務とは言い難いが、勉強のために整理した。
 
 預金というのは法律上は金銭債権と呼ばれている。金銭債権というのは簡単に分割できるために、死亡によって当然に分割されるものと考えられている。亡くなったお父さんの預金を、子供が持ち分だけ請求できる(銀行実務ではこんなことは認めていないが、法律上はできる)。
 
 定額郵便貯金も普通に考えれば、金銭債権で普通の銀行預金と区別する理由はない。
 ところが、定額郵便貯金は相続人が共同でないと払い戻しができないしくみになっている。
 
 旧郵便貯金法7条1項3号は定額郵便貯金を「一定の据置期間を定め、分割払戻しをしない条件で一定の金額を一時に預入するもの」と定義している。つまり、「分割できない」貯金だと言っている。だから相続があっても分割できないことには変わりないので、相続持分だけ払い戻して欲しいということはできないのである。
 
 この郵便貯金法は、郵政民営化に伴い廃止されたのであるが、「郵政民営化法等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」があって、郵便貯金法7条1行3号はそのまま踏襲されている。いくら弁護士でも、こんな長ったらしい名前の法律は分からない。ともかく分割はできない。
 
 それでは遺族はどうしたらいいのか。共同行使しなければならいとなると、けっこう難しい場合がある。みなが仲良くしていれば裁判などしない。相続人に対立があるから裁判になる。いっしょに裁判などできないことが多い。その場合は、他の相続人もまきこんで訴訟するか、遺産分割協議をして定額郵便貯金を誰かに帰属させて郵便局に支払ってもらうしかない。
 
 ところで、かなりマニアックな内容になるが、最近定額郵便貯金をめぐって最高裁判決があった(平成22年10月08日 最高裁二小 判決)。
 これは、定額郵便貯金が誰のものか争いになった事例で、遺産であることの確認を求める裁判を許容したものだ。
 
 弁護士は一応知っておくべき判例ですね。