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№624 退職従業員が同じ事業を始めた事例

№624 退職従業員が同じ事業を始めた事例
 これは最近最高裁が出した事例だ(一小H.22.3.25、判時2084号11頁)。
 
 産業用ロボットなどの製作をする会社の営業担当者と現場担当者が2人で組んで、同一事業を営む新会社を設立した。二人は前の会社の取引先3社を新たな顧客として獲得している。
 
 顧客を取られた旧会社はだいぶ怒ったのだろう、この2人及び新会社を相手取って損害賠償請求を求めた。
 
 原審は旧会社の負け、控訴審は旧会社が勝訴している。ところが、最高裁はこれを覆し、「不正な手段を講じたとまで評価し得るような事情があるともうかがわれない」「社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法なものとはいうことはできず」として損害賠償を認めなかった。
 
 何が自由競争の範囲を逸脱するかは非常に難しい。社員も職業選択の自由、営業活動の自由があるから、自分の知識、ノウハウ、人間関係を生かしたからと言って違法行為とは言えないからだ。
 
【違法行為の事例】
① 営業秘密を利用したような場合。
② 社員を一斉に引き連れるような場合
③ 違法な行為(「今度、事業を引き継ぎました」などとウソを言う場合など)で顧客等を奪った場合
 
 一般的には競業避止義務など特別に義務を課していないような場合には損害賠償請求を認めることは難しいだろう。