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№609 依頼者のやる気

№609 依頼者のやる気
 私たちが債務の相談を受けたとき、多くの相談者はすっかり疲れていることが多い。
 極端な場合は精神的に疲弊して危険な場合もある。経験上、危険な場合は何となく分かる。そんなときには奥さんや家族に必ず来てもらう。
 
 サラリーマンや主婦、学生などが多重債務となって苦しんでいる場合と、事業者が借金で苦しんでいるのとは似ていると言えば似ている。日々の支払いをどうするか毎日のように悩み、何のために生きているか分からない、サラ金や銀行のために働かされているという意識が湧いてくる。借金で先の見えない人生はどこかで区切りが付けられるべきだ。
 
 しかし、事業者の場合の重圧は質が異なる。事業者は逃げる場所がない。事業者には社員もいれば家族もある。事業者は常に経営のリスクを背負いながらリーダーシップをとってきた。彼らを放り出すわけにはいかない。明日はお客が来るだろうか、明日はお金が入るだろうかと不安定な収入を当てにしながら生きなければならない。
 
 事業者は銀行と交渉し、税務署とも協議しなければならない。事業者の苦労を分かっている担当者が対応すれば良いが、中には金は返すものだ、税金は支払うものだという単純な議論しか持っていない者もいる。こうしたバカ担当者に出会うと、事業者は本当に苦労する。
 
 「そういう段階は過ぎました。来月には50万円でもいいいですから払ってください。」
 「お支払いいただけなければ売掛金を差し押さえます。」
 
 まるで、悪代官のように支払いを要求する税務署員に対応することは本当に辛いだろう。
 
 私の事務所では、どんな場合でもまず当事者を励ますことから相談を始める。これも「がんばれ」などという意味のない応援はしない。時には「がんばらなくてもいいですよ。」と言うときもある。事業者はリアリストだから通り一遍の話では励まされない。生き残りの先が見える道筋が示されないとだめだ。私はこうした立場に立ちきった相談は普通の事務所ではなかなかできないと自負している。