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№1818 別会社による借金逃れ

№1818 別会社による借金逃れ

 別会社を設立して、借金の支払いから逃れようという手法はしばしば見受けられる。そのため、別会社に対して責任を追求する裁判例も見受けられる。

 別会社が同一の事業を継続する場合、会社法22条により別会社であっても、旧会社の債務を引き継ぐ場合を認める。これは事業の譲渡+商号の継続使用を要件としてる。

 東京地裁H27.10.2(判時2292号98頁)の事例は銀行が別会社に債務の追求をした事例だが、これを肯定した。

 事案はこうだ。
 設計などを行うIT系の会社、株式会社デザインワークスプロジェクト(デ社)は経営が悪化し、預金差押え、債権者の取り立て騒ぎなどがあった。こうした事情下で同社の取締役が別会社DWPの名称を使用した会社を設立し、同一のロゴを利用した。DWPはデザインワークスプロジェクトの頭文字だ。DWP社はデ社の内装デザインのみを業務とし、デ社に対し顧客紹介料を支払っていた。

 裁判所は次の事情から本件を事業譲渡と認定した。
 ① デ社が経営悪化した時期に、デ社は内装設計をやめ、一方でDWP社が内装設計を始めた。(時間的に接近している。)
 ② デ社はもともとDWPの名称を利用して事業をしており、DWPの名称そのものにブランド力があった。
 ③ DWP社はデ社の継続中の仕事を引き継いでいる。
 ④ デ社の在籍者はいなくなり、同一人がDWP社で働いている。
 ⑤ デ社のホームページにはDWP社のURLが表示してある。

 「以上を総合すると、デザインワークスプロジェクトは、被告に対し、」「設計、監理事業のために組織化され有機的一体として機能する財産を譲渡したものと認めることができる」(東京地裁

 その上で、商号の続用について次のように認定している。
 デザインワークスプロジェクトとDWPとは同一性は判断できない。
  しかし、
 ① DWPはデザインワークスプロジェクトの頭文字で、かつデ社が従前から使っていること。
 ② DWP社がDを逆さまにした同一のロゴの使用をしていたこと

 から、「商号の続用」と同じであると認定して、銀行の追求を容認した。
  なお、商号の続用については最高裁H16.2.20のゴルフクラブ事件がある。

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