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№1071 親族から金銭援助

№1071 親族から金銭援助
 倒産企業の特徴はお金を使い切ってしまうことだ。
 すでに不動産の売却はもちろん、会社の保険も解約。社長の自宅なども売却してしまう。そして、どこからも借りれなくなり、最後の手段が親族からの援助だ。社長夫婦は親戚に頭を下げに行き、高額な資金援助をしてもらう。

 こうした状態では社長の頭はすでにパニックになっていて、実際にはどうしていいか分からない。毎日が資金繰りで次の日返すお金のやりくりだけに頭がいっぱいで、困難を乗り切るだけの展望などほとんど失っている。親戚からの援助もあっという間に使ってしまい、いよいよ破産だ、弁護士に相談ということになる。

 こうした極限状態で弁護士に相談することはきわめて重要だ。顧問弁護士がいればできるだけ早期に相談を始め、最悪の事態を想定した展開を常に思い描く必要がある。

 弁護士との相談で決定的に重要なのは、「本業が利益をあげているか」だ。つまり、借金などの支払いがなければ事業から余剰を確保できるかがポイントになる。キャッシュフローベースで現金を生む仕組みはあるか、これが大切だ。当然帳簿の正確な記載は欠かせない。

 その上で、借金の返済の順序を考えていくのだが、給料、仕入れ、外注など事業維持に必要な金銭、税金、社会保険などの公租公課、銀行からの借金と順序を組み立て事業を進めていく。

 ここで、親戚からの援助が期待できる場合、事業維持に最も有益な場所に資金を投入する。これはとても大切なことだ。親戚からの援助は事業最後の資金だ。単に借金を返すだけでは意味はない。そのまま銀行の返済などに当てたとしたら、それは明日死ぬところを、3日後に寿命が延びた程度の意味しか持たない。

 私たちの世界ではこうした資金援助のことをスポンサーと呼ぶことがある。
 この援助を新事業の資金として投入することを考える。例えば、旧来の会社は存続を諦め、事業のみを新会社に譲渡するというような方法を考える。それは事業譲渡契約であったり、企業分割であったりする。

 例えば、親族関係者から500万円集めることができたとすれば、中小企業ではそれは立派な資金となる。このお金はけっして借金の返済につかわず事業存続のための資金として投入するのだ。

 このような手法は借金を旧会社に置いておいて、踏み倒してしまうという手法だが倫理的には問題があるし、きちんとした整理をしないと違法にもなる。