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№474 大韓民国判決の効力

№474 大韓民国判決の効力
 中小企業もグローバリゼーションとは無関係ではない。韓国企業とのトラブルはどのように解決されるだろうか。
 
 事例は日本法人が韓国法人より冷凍抱卵ニシンを購入した事例だ。経過の詳細は省略するが、要するに商品に問題があったので、残代金を支払わなかったところ、韓国企業が韓国の裁判所で日本企業を被告に提訴して勝訴した事例である。韓国企業は韓国裁判所の判決文によって、日本企業の財産に強制執行をしてきた。日本の裁判所はこれを認めている(東京地裁平成21年2月12日、判時2068号95頁)。
 
 問題は韓国裁判所の判決が日本でも効力を持つかどうかと言う点にあった。
 外国の判決がわが国で効力を持つかどうかについては、民事訴訟法118条が定めている。その要件として、外国裁判所に国際管轄権があるかどうか、つまり、韓国裁判所に当該事件を裁く権限があるかどうかが争われることになる。
 
 こうした国際裁判籍については、明確な定めや条約がないため諸事情を考慮して、条理に照らして決することになる(最高裁平成10年4月28日、判時1639号19頁)。
 
 本件では、検品の後に日本企業がTT送金(Telegraphic Transfer)により、支払う旨合意し、韓国側はこれに基づき、インボイスを日本側に発行し、韓国企業名義の銀行口座に支払うよう請求した。これを、裁判所は、義務履行地は韓国であると認定した。日本法によると、義務履行地の裁判所で裁判をすることになってるため、この点を考慮すれば、韓国で裁判するのが正当ということになる。
 
 外にも、日本企業は韓国裁判所で4年間裁判を戦ってきたことなども考慮して、韓国内に国際裁判籍があることを認めた。裁判所はそのほかの要件も満たすので、韓国企業に韓国裁判所の判決によって強制執行することを認めたのである。
 
 実際にはけっこう複雑な事件だ。本件は商品を送った後にTT送金で代金を支払うという決済方法だった。商品発送が前履行だったため、韓国企業にとっては思わぬ損失を招いたということになろう。TT送金の場合はこうしたリスクがつきまとう。
 
 トラブルが起これば裁判になるのだが裁判になった場合の日本企業の負担は相当なものだ。こうした問題を回避するために予め裁判の場合の処理方法について契約で定めていることが必要だ。