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№747 管轄、どこで裁判をするか。

№747 管轄、どこで裁判をするか。
 裁判をする場合、どこで裁判をするかは実務家にとってかなり重要な問題だが、一般には余り知られていない。中小企業とはいえ経済活動は全国的に行われている。グローバリゼーションの進展によって紛争も国際的になる。ひとたび紛争が生じたらどこで裁判するのだろうか。

 民事訴訟法の原則からすれば、「管轄」つまり裁判をする場所は相手方の住所地である(4条1項)。これでは名古屋の業者が札幌の業者に対して裁判をする場合、管轄は札幌地裁になってしまう。名古屋の業者としては費用が大変だ。

 もちろん、これは大変、不公平ということで、民事訴訟法はいくつか例外を定めている。例えば、財産上の訴えは義務の履行地が管轄を持つ。金銭債権の場合、持参して支払うのが原則だから(民法484条1項)、履行地は債権者の住所となる。そこで、裁判も債権者の住所でできることになる。さっきの例から言えば名古屋で裁判ができることになる。

 このようにどこで裁判をするかは重要な利害に絡む問題であるため、契約書には必ずどこの土地に管轄があるか合意で定めておく。物品を継続的に取引する場合には基本契約書を結ぶことが少なくないが、そこでは必ず「合意管轄」を定めておくことになる。

 これが、国際的な取引になると管轄の問題は非常に深刻になる。費用もかかるし、裁判国の裁判官の資質などいろいろ問題になる。国際的な契約書には当然紛争解決についての定めがあり、裁判籍についても定めている。

 もっとも、契約書上、専属的国際裁判管轄の合意が外国、例えばチューリッヒにあったとしても、争えば日本の裁判所に裁判籍にが生じることがある。例えば、関連する別の義務を問題にして国内で裁判を起こした上で、日本の同一裁判所で裁判することは認められる。これは客観的併合と言われるもので、最高裁は認めている(最2,H13.6.8判時1756号55頁)。東京地裁の事例であるが主観的な併合も認めた(H22.11.30判時2104号62頁)。