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№438 会社分割と債権者の追求

№438 会社分割と債権者からの追求
 会社分割によって、新設会社が吸収会社に事業は移転するが、債務は元の会社(分割会社)に残る。債務が新しい会社に移転することがあるが、このときには債権者異議手続きなどの保護手続きが用意されている。

 しかし、逆に、旧会社に債務が残る場合には、旧債務者の債権者の保護は驚くほど薄い。そのため、会社分割は根雪のような長期債務切捨ての道具に利用されている。我々、法律家の感覚からすると、こんなことで債務を免れて良いものだろうかと思ってしまうほど、債権者保護に薄い。

 しかし、考えてみれば、どうせつぶれてしまう会社だったのだから、もともと回収は期待できなかったとも言える。会社分割でなくとも、事業の譲渡は許されているのだから、それと変わらない会社分割が不当ということにはならないだろう。

 さて、取り残された債権者が新しい会社に責任を追求するには一体どのような手段が可能だろうか。新しい会社が旧債権者の追求を免れるためにはどんなことを注意した良いのだろうか。

 理論的には債権者追求手段は次の3つが考えられる。
 ① 債権者取消権の行使
   これは、債務を免れるための財産譲渡行為などが対象となる。この詐害行為取消訴訟は非常に難しい事件だ。なにしろ、第三者である債権者が他人の会社の実情から詐害性を立証しなければならない。そもそも、会社分割は組織行為と言われており、財産上の行為とは一線を画しているため、詐害行為取消制度が利用できるかは問題が残る。

 ② 法人格否認の法理の活用
   これは、実態としては一つの会社だが別会社と称して財産を免れる場合に利用される。あるいは、債務逃れが権利濫用と見られる場合に利用される。しかし、形式としては独立した会社を同一会社とすることは、簡単ではない。特に、旧会社と新会社とが事業の実態として区別される場合にはきわめて困難だろうと思われる。
   
 ③ 分割無効の訴訟
   この手続きは分割の効力発生から6ヶ月以内に提訴しなければならない。しかも手続き的瑕疵だけが対象となる。これを利用することは非常に限られた場合だろう。