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№439 中小企業の研究

№439 中小企業の研究
 中小企業をどのように見るかは非常に難しい。中小企業というのは規模が小さいと言うだけで、それが活躍する場面は実に多様だからだ。私が所属する中小企業家同友会も会員は本当に多様だ。それだけに、大企業にはない交流があるようにも思う。

 中小企業はよく2面性があると言われる。それは弱小という負の面があるが、社会のニーズに直接応える役割という正の面があるというものだ。大企業は専門性も高いが、小さな要求には応えられない。しかし、文化の多様性や、経済の発展は実は小さな革新の積み重ねで成り立っている。そこに中小企業の生きる道がある。

 携帯電話という大きな構造があっても、小さな要求に応じて改良が積み重ねられ、質的には高いものができあがっていく。大企業からの部品への要求、消費者からの商品への要求にはたくさんの創造が存在している。その積み重ねが社会経済全体の発展や多様性に貢献していると思う。そこに中小企業の役割はあるだろう。

 中小企業はいろいろある多様な存在なのだから、その研究も単純ではない。三井教授は中小企業を一般を語るのではなく、「市場の社会構造」という視点からの研究の重要性を説く。「企業の地域集積と分業にもとづく企業関連構造・生産組織としての産業地域という主題」が重要であるという。それは単純な経済的な分析ではなく、「労働の協働性・人間生活と地域の有機連携性を踏まえた新たな『公』=社会性」への「第三の視点」を持つことだという。

 確かにそうだ。中小企業は搾取される存在だとか、中小企業は起業家精神にあふれた創造の担い手だとか、単純な割り切りはわかりやすくてアピールしやすい。私も場面に応じて、単純化して発言することがある。でも、本当は複雑で単純ではない。そういうのを総体として理解することが大切なのかもしれない。

 その総体として理解するためには、地域的な構造や、「企業の範囲」と言われる構造など、構造ごとに分析して集めていくということが必要なのだろう。

 ※ 三田商学研究38巻第6号1996年2月
   三井逸友「グローバルに見た中小企業の新パラダイム」より