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№344 サービス残業

№344 サービス残業
 労働者は「労働」を提供し、「賃金」という対価を受け取っている。労働というのは使用者の指揮命令下におかれて行動することを意味にしている。

 これは時間が目安に使われることもある。「労働時間」だ。労働者は労働のために一定時間を拘束されている。時間中の拘束は指揮命令のめやすとなる。使用者は「労働」に対しては対価を支払わなければならない。労働時間は労働基準法によって法定労働時間、働かせてよい時間が決められている。
  
 たとえば、朝のお掃除の時間はどうだろうか。社員に対して30分は早く来て、机の周りを片付けるように指示している会社も少なくないだろう。そうじ、朝礼が行われて、午前9時から仕事につくとしている会社はないだろうか。

 これにはちゃんと判例があって、判例は早く来ることが命ぜられるような場合は「労働時間」になってしまう。労働の準備期間ではない。

 たとえば、サービス残業はどうだろうか。社員が勝手に残っているから、残業ではないとしている会社は多い。しかし、サービス残業が恒常化しているとそれは実際には所定労働時間内で仕事を処理することを前提としていない。つまり、会社は社員に残業することを求めているのだ。使用者としては社員に「残業してはならない」と明確に指示する必要があるし、仕事量の調整が必要だ。

 サービス残業と称して残業代を払わなければ、社員は「会社は私から利益をむしり取っている。」と思うだろう。残業代を払えば、会社は「社員はサボって残業している」と思うだろう。私は残業は労使の関係をゆがめる要因になると思っている。営業は時間内に終わることが肝要ではないだろうか。

 人件費は多くの事業者にとって、最大の固定経費の一つだ。その処理は会社の命運を左右する。しかし、労働は企業の利益の源でもある。つまんないことにけちって「けちな会社」、「社員から利益をむしり取る会社」と言われるより、少しだけ余裕をもち「社員のために精一杯してくれている会社」と思われた方が会社にとっては利益だろう。

 もちろん、これらは社員が社長の努力を理解していることが前提となる。そこを理解させる、会社に感謝させるというのも社長の力量の一つだ。