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№1474 賃金体系の変更の手続き

№1474 賃金体系の変更の手続き

 会社が徐々に大きくなると,それまでの賃金体系ではうまくいかなくなる場合がある。会社を部門ごとに分け,部門ごとに異なった賃金体系をとらざるえない場合もある。こうした場合,人によっては賃下げになるため,賃下げが労働契約から言って許されるかどうかが問題となる。

 会社と社員とは労働契約で結びついている。契約である以上,一方が勝手に変更することはできない(労働契約法8条,9条)。特に労働者の賃金を減らす場合は「不利益変更」と言って原則社員の同意が必要となる。

 そのため,同意を得つつ賃金体系を変更していくことになる。社長は社員と向き合い,賃金体系変更の必要性を訴えていくことになる。その場合,いかに説得するかは,労働契約法や賃金変更に伴う裁判例が参考となる。

 労働契約法10条は就業規則変更による労働条件の変更を定めているが,賃金の不利益変更には変更の必要性,相当性が必要であるとしている。

 「必要性」というのは,単に赤字だというだけではだめで,判例上は「高度の業務上の必要性」つまり,いろいろ経費を削った上で尚も賃金までも削らなければならないほどの必要性というのが求められる。

 さらに,「相当性」というのは,賃下げのやり方の妥当性だ。必要性について労働者に事情が周知されたか,労働者の意見を聴取しているか,賃下げの幅は妥当か,平等な内容になっているか,猶予期間はあったかなど様々な要素が考慮される。

 このように,賃金体系の変更は労働契約上のリスクを伴うため,顧問弁士,組織変更の問題に詳しい社労士などの協力を得つつ会社としての戦略をつくりあげていく必要がある。