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№254 倒産の時のやりとり

№254 倒産の時のやりとり
 さすがに最近は倒産事件が増えている。

・・・倒産前の相談・・・
依頼者:メイン銀行がこれ以上の融資はできないと言ってきたんです。
弁護士:業績はいいかと思うのですが,やっていけないのですか。
依頼者:販売はかなりうまくいっていますが,利益率が下がり始めて,売れても利益を生んでいないのです。いろいろ努力してきたのですが,メイン銀行ももう追加融資はできないと言ってきました。来月には資金がショートします。
弁護士:追加融資はともかく,当面の支払いを何とかすれば乗り切れるように思うのですが。今なら,銀行はかなり柔軟に対応すると思いますよ。事業を一部切り離したり,事業そのものを売ってしまうと言う方法もあるように思います。
依頼者:私は朝から晩まで会社のために働いてきて,何もかも会社のためにつぎ込みました。休みもここ数年取ったことがありません。もうそろそろ別の人生を歩みたいと思うのです。あと10年若ければ何が何でもやったでしょうけどね。

・・・倒産後,電話・・・
銀行支店長:どういう経過で倒産に至ったかお知らせ頂けないでしょうか。
弁護士:私としては事業再生の事例だと思ったのですが,社長がやる気ないのでどうしようもありませんでした。
支店長:私どもとしてはいいお客さんだと思っており,何とか力になりたいと思っていました。いろいろ相談に乗って頂ければ良かったのですがね。

・・・倒産後,相談・・・
弁護士:銀行とはどんなやりとりがあったのですか。
依頼者:今度の担当者が本当に細かい人で,いろいろ帳簿のことや売り上げのことを言ってきました。あまりうるさいのでずっと逃げていました。
弁護士:銀行は力になるようなことを言っていましたがね。
依頼者:銀行は最後は貸さんと言っていました。

 銀行とのかけひきで融資を引き出してきたと自負する経営者は銀行に何もかも言うことをためらう。銀行は倒産してからは,本当は力になりたかったと言っているが,実際には最後はつぶしにかかっている。依頼者が精神的にこんなに参ってしまったのは,追加融資を繰り返し,銀行に死命を制せられてしまったことも要因の一つだ。