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№372 社長の信用

№372 社長の信用
 会社の資金繰りが悪化し、当面の資金繰りをどうするかと悩んでいる業者は多い。当面の資金をどうするか。3ヶ月後のキャッシュフローが危ない。こうした薄氷を踏む思いで日々の経営を乗り切っている事業者は少なくないだろう。

 このとき、当面の金融のやりくりで乗り切れる可能性のある企業、これは債権を切り捨てず「内科的」なやりくりで健全化を目指す。その薬となるのが金融検査マニュアルだ。債権を思い切って切り捨てて、再生にかける、これは「外科的」手法だ。手術手法は民事再生、破産、企業分割がある。

 金融検査マニュアル別冊によると「中小・零細企業等の債務者区分に当たっては、」「代表者等との一体性」を考慮して債務者区分を行うとなっている。融資を得る場合には社長や共同して経営に携わっている親族の信用を総合的に勘案して考慮される。これは正しい。

 しかし、7~8年前には、全然関係ない「娘」とか「息子」を連帯保証人にとっている銀行もあった。私の依頼者は当時20歳のアルバイトをしていた長女の判子までとられていた。
 まるで、人質として娘を差し出すようなもので、よくそんなことまで求めるものだとあきれてしまう。もう、会社が倒産して7年ほど経つが、この子は未だに数億の借金を抱えていることになる。(この事例は事情があって、娘は破産せず、勝手にしろと居直っている。もし、銀行が訴訟してきたら、こんなひどい貸し方をする銀行を訴えてやろうと考えている。優越的地位の濫用もしくは公序に反する一種の暴利行為類似の行為だ。)

 会社が破綻して社長は自己破産することになる。これはとりあえず借金の問題に決着をつけておいて、社長個人の捲土重来、やり直しを図るためだ。いつまでも借金に縛られていたら、新しい事業はできない。
 
 最近の相談で破産して免責を受けた社長が、新たに会社を経営した場合、会社の信用はどのように評価されるかが問題なった。借金から解放された新会社の業績はそこそこ、赤に限りなく近い黒だ。低空飛行を続けている。
 しかも、新会社の業態が同じで、社長も同じとなると、信用もぎりぎりラインということになる。公的融資を受ける場合でも、ある保証協会はOKでも、ある保証協会はバツということになる。むしろ、よくOKのところがあるな、というのが感想だ。

 これは本当に難しい。現在、私たちは中小企業家同友会の専門家プロジェクトを作っているが、こうしたシロウトでは手に負えない事例について何とか事業維持、再生を図れないかと考えている。
 現在の業績がけっして悪いものではないことを明らかにすることは当然のことだろう。社長は当面退いてもらう外はないかもしれない。人、物、金の面で旧事業との差異ももっと明らかにすることになるだろう。