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№371 CRA(地域再投資法)とリーマンショック

№371 CRA(地域再投資法)とリーマンショック
 サブプライムローン低所得者層に対し、無理に住宅ローンを貸し付けたところから始まった。リスクの高い債権が、いろいろな形で流通し、ある日急激に焦げ付いていった。このことをとらえて、CRAに敵対的、米国保守派の議員から、リーマンショックの原因はCRAだという意見が出されるようになっていたらしい。

 この動きについて、ニューヨークタイムズはCRAを擁護する論説を出している。ちょっと古いが紹介したい。

http://www.nytimes.com/2008/10/15/opinion/15wed2.html?_r=1

 ニューヨークタイムズはCRAの実績を高く評価し、サブプライムローン問題はむしろ、CRAのコントロール外で起こったことだと述べている。

 CRAは低所得者層が多く住む地域の住民に対し、銀行が積極的に融資することを求めている。住宅開発はその一つだ。サブプライムローン低所得者層に対する過剰な住宅ローンが問題になっていることから、CRAがサブプライムローン問題を引き起こしたと、米国保守派は主張している。

 これに対するタイムズの意見はこうだ。
 First, how could a 30-plus-year-old law be responsible for a crisis that has occurred only in recent years?
 30余年の歴史を持つCRAだが、サブプライムローン問題が出たのはここ数年のことだ。法に問題があるなら、もっと早くこの問題が出ているはずである。 

 In addition, subprime lending was not driven by banks, which are covered by the act.
CRAは銀行が対象となっている。サブプライムローンは銀行よりも、投資機関、ノンバンクが競って行っていた。不良債権を含んだ商品を売り歩き、ぼろ儲けしていった。リスクの評価しにくい商品を作り上げて売り歩いたのである。こうした、ノンバンク、投資機関はCRAがカバーしていない対象だ。

 実際、ある研究によると、CRA管理下にある銀行が貸し出した住宅ローン利用者に比べて、ノンバンクなどが貸し付けた利用者の破産は3から5倍多いという。

 CRA自体は、健全な経営の範囲で地域貢献するということを掲げている。むしろ、CRAの考えのもとで、債権市場がコントロールされていれば、今日のリーマンショック、引き続く大不況は無かったということだろう。