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№234 「大恐慌」の教訓,企業体力とは何か。

№234 「大恐慌」の教訓,企業体力とは何か。
 暴力的な不況が襲いかかり,あれよあれよという間に減産になり,5割なんてまだいい方,8割,9割減産なんてのもめずらしくないような異常事態になった。しかし,私の周りの感想や,メディアの報道を見ると,異常事態もなにやら慢性化し,若干でも景気は上向きになっている気がする。

 私の事務所は,債務関係の事件が急激に増えて,ある会社は残念ながら倒産となり,ある会社は生命維持装置で何とか生き残っている状態であり,ある会社は何となく希望が見えてきたりしている。この差は何なのだろうか。

 この差は当然の事ながら「企業の体力」の差だ。と言っても抽象的だが,今回ほど「企業の体力」が明確に意識された時期は少ないだろう。劇症型の疾患では,体力の弱い者から命を失うように,劇症型の不況下では,体力のない企業からばたばたと倒れていった。

 改めて相談してみると,そんなに売り上げがありながらどうして,融資を減らさなかったのだろうかとか,一つの企業に頼りすぎていたとか,社員が多すぎたとか,問題はいろいろある。経営塾に通いながら,お友達づくりだけで終わっていて,実際には何も学んでいなかった事例もある。むしろ,ある種のいい加減さをお友達づきあいの売りにして,それでも経営はやっていると妙な過信を産んだ例もある。

 経営の体力とは何だろうか。
 ① 慢性的に融資や手形に依存し,その量が徐々に拡大していること。
   例えば,5年前は借金は6000万円程度だったが,徐々にふくらみいつの間にか1億円を越えるか,越えないかというところまで来た場合だ。いつも借金を返済しているから,そこそこの売り上げはある。営業上の視点からすれば,よい部分はあるのだが,実際には長い時間かけて,企業は死に至っているというような状態だ。長期の自転車操業みたいなところがある。
 ② 経理が分かっていないこと
   例えば,奥さんや,母親に経理を任せきりで自分では何も分かっていない場合。奥さんは経営には携わっていないから,危機にあっても何も分からない。実際に,キャッシュフローの現状を見れば,綱渡りの営業が続き,将来的な事業の維持,拡大などが考えられないまま,漫然といままでどおりの経営を続けることになる。
 ③ 一つの企業に依存していること
   今回の不況下で,取引先を分散している企業が生き残っていることが多い。「もし,一つだけだったら今頃つぶれている。」とか,「別にインターネットで顧客があったから助かっている」とか,リスクを分散することや,少しでも利益を拡大しようと努力してきた企業はやはり不況下でも強い。
 ④ 撤退のルールを頭に描いていないこと
   事業の収益能力と,人材の量,人件費が適正なバランスをとっていないことがある。これは,経理の問題にもつながるが,事業者は設備投資や人材投資に当たって,勝負に出ることがある。これと,不況と重なるとかなり悲惨だ。

 この外にも貯金がないとか,儲かったときに土地などで財を蓄積しておいたとか,「体力」の要素にはいろいろある。この際,「体力」について考え,企業体質の健全化を作り上げていくことが必要だろう。