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№232 金銭債権の評価(評価基本通達)

№232 金銭債権の評価(評価基本通達)

 最近税理士さんの勉強会に出席するようになり,税務と法務とが随分交錯していると改めて感じている。私達は日常生活で法律相談しているが,税理士さんは違った意味で法律が必要だ。

 その中で債権の評価が問題となった。
 休眠(というか死んでいる)会社で見なし解散の登記が行われている。社長のこの会社に対する債権1205万2251円の取り扱いが問題となった。

 この会社は事業を別会社に移し,みなし解散となった年に清算するべきところ行っていなかったために社長の会社に対する債権が残ってしまった。これが資産という訳である。回収の見込みもない債権を資産と見なされて相続税課税対象となるのは不合理だ。

 本件では審判所は,最後の決算期の債権(社長の会社に対する債務)を相殺処理して,その残金23万9174円を債権の評価であるとした。さらに,この23万円を「回収が不可能又は著しく困難であると見込まれる」(評価基本通達205)として,会社資産の限度で(会社債務総額のうちの本件債務の占める割合で按分処理する)債権価格を評価した(平19.10.24,裁決事例集№74,274頁)。

 結果としては妥当なものだろうという気がする。

 しかし,この「回収不可能」という評価基本通達は時々不合理な感じがするときがある。例えば,保証債務だが,会社が倒産寸前で社長が死亡(例えば自殺)してしまい,その後に倒産したような事例では,相続人に多額の保証負債がかぶさってくる。このときに,保証債務が相続財産にカウントされるかというそうではない事例がある。

 つまり,社長の死亡時には会社は運営されており,死んでいない。破産,民事再生,不渡り処分などいずれでもないため,いちおう会社債権は会社が払うべきものとして扱われる。つまり,相続人の保証債務は「現実化」していない。つまり,負債として計算されないことになる。

 振り返ってみれば,社長の死亡により会社は倒産状態で,実際,破産したのだから,このような結果は相続人としては割り切れない。保証債務の支払いを迫られたのであるから,それを控除して欲しいと思うだろう。

 社長個人の不動産があるため,相続放棄をすることもできず,多額の保証債務を支払わなければならず,さらに多額の相続税もかかるという,とことん悲惨な状態になってしまう。