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№190 食べ物の神様

№190 食べ物の神様
 日本書紀古事記は思ったよりおもしろい。

 日本書紀には「保食神」(うけもちのかみ),古事記では「大気都比売神」(おおげつひめのかみ)として食べ物の神様が登場する。両神とも女神だ。

 保食神(うけもちのかみ)についての日本書紀の記述は次のようになっている。
保食神,乃ち,首(こうべ)をめぐらして,国にむかいしかば,口より飯(ひつ)出ず。」また,海(うなばら)にむかしひかば,鮨の広(ひろもの),鮨の狭物(さもの),また口より出ず・・・・」山に,頭を向ければ,けものが口からでてきた。
 
 大気都比売神になると,もっとすさまじい。
「ここに大気都比売神,鼻・口また尻より種々(くさぐさ)の味物(ためつぶつ)を取り出して」,須佐之男尊(すさのおのみこと)に差し出している。

 食べ物の神様は,余りに下品な食べ物の出し方に怒りを買い,保食神(うけもちのかみ)は夜の神様である月夜見(つくよみ)神に,古事記では乱暴者の須佐之男尊(すさのおのみこと)に殺されてしまう。しかし,どの神様も殺された後の,体から蚕,稗,小豆,麦,米,大豆,など五穀が生えてきて,それが日本の穀物の始まりとなっている。食べ物の神様が殺された後に,主食となる食べ物が生えて来るというのは東南アジアや太平洋地域に広くある伝承らしい。

 私はこれには大いに創造力をかきたてられる。

 私は保食神にしろ,大気都比売神にしろ,体から食べ物を出すときには,何か人とは違う大きな,それもとてつもなく大きな山のような形に体が変身したのではないかと思う。保食神が口から,大量の魚や,獣をはき出し行く様には,大いに創造力がかき立てられていく。ツクヨミスサノオが感じた「穢れ」は実は,その食べ物にまつわるすさまじい感じが恐怖となって映ったのかも知れない。

 例えば,私はチンパンジーが,ヒヒなどの猿を狩りして,互いに分け合う影像を見たことがある。チンパンジーたちは,メスたちはヒヒの腕を食べ,雄たちはヒヒの脳を分け合っていた。ライオンたちが群れをなして子象を狩りする影像も見たことがある。これらにはある種の興奮と,見てはならない物を見てしまったような「穢れ」を感じる。食べ物が胃袋の中に入って消化されていく様は「穢れ」を感じさせる。嘔吐したものは気持ち悪い。農耕では糞尿が肥料として必要だ。

 食べ物には,避けられない「穢れ」があって,それを,ツクヨミスサノオ両神は食べ物の神を殺すことによって,浄化し,その後に美しい五穀や蚕を人々にもたらしたのかもしれない。
 しかし,ツクヨミは罰せられ,太陽神のいない夜しか世にでることができなくなり,スサノオは遠く,黄泉の国に流されている。