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№2406「高収益事業の作り方」第3章,パートナーシップで経営する

 稲盛和夫著,「高収益事業のつくり方」(日経ビジネス文庫)を読んでいる。これは,中堅,中小企業の経営上の悩みに対して,著者がそれに答えるというQ&A方式の本で企業が具体的にかかえる悩み,体験が語られおもしろい。第3章は「パートナーシップで経営する」だ。

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1. 問題の核心は会社理念に対する会社の言行一致にある
  「労使の立場を超えた企業風土をつくる」というのが稲盛経営哲学の基本となっている(122頁)。そのために会社の基本理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に,人類,社会の進歩発展に貢献すること」と定め,「この『全従業員』とは経営者である私を含めた,この会社で働く者全員を指します」という(124頁)。
  
  企業全体が一つの生き物のようになったとき,経営者もその一部でしかない,会社が「全社員の物心両面の幸福」を追求する存在であると全従業員が確信を持てれば,自分の役目を果たすことが自分のためにもない,人のためにもなるという一体感が生まれる。問題は問題は会社が本当に「全従業員の物心両面の幸福」を追求してくれていると信頼されるかどうかという点なのだろう。

 

  本章の最後には「いちばん大事なことは,従業員が社長を信頼し,尊敬してくれているかということです。この信頼を尊敬がなければ,社長はただ権力でもって,従業員を押さえつけているだけの存在になります」と会社,社長に対する信頼の重要性を強調している(163頁)。

 

2. 賃金をどう考えるか
  ある事業者は業績が上がれば賃金は上がり,逆であれば下がるという目標管理制度の是非について稲盛氏に問ういている。これに対して,「すばらし業績には栄誉と賞賛を与え,報酬で大差はつけない」と答えている(150頁)。このような目標管理制度は「インテリが陥りがちなトラップ(罠)にはまっておられると思います」という。

  報酬が多ければ大いに喜ぶがそれは持続せず,次の刺激,高い報酬がほしくなる。金銭のインセンティブは強すぎるので,それにより健全で持続的な人間関係を続けることはできないというのが経営学の定着した考え方だ。本書ではそれを具体的にかつ稲盛氏の体験を交えて解説されている(152頁)。

 業績は本人の努力以外の事情によっても左右される。また,組織である以上,みなの協力があって初めて実現するものでもある。仕事の喜びは賃金を得ることではなく成果を得ること,その成果を会社全体で賞賛されることによって得られる。これはそうであるべきだという問題だ。この会社は会社全体で成果を生み出し,会社全体で喜ぶ,そういう会社なのだという文化をつくり上げなければならないという稲盛氏は考えている。「あなたの会社は,報酬だけで人を動かそうとするのではなく,栄誉と賞賛を与えることで従業員を持ちベートする方法を取り入れるべきです。」(156頁)

 

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