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№109 中小企業の株式評価

中小企業法務 №109 中小企業の株式評価

 「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」の施行に伴い最近は事業承継の話題が多い。

 相続は事業承継対策の大きなテーマの一つである。法律的には遺産分割の問題として,税制的には相続税などの問題が大きい。このテーマについては,会社の価値をどのように評価するかがスタートとなる。会社の価値は会社の株価として現れてくる。

 私の取り扱った事例でも,会社の不動産がいくつかあったために,会社の利益の割には会社の評価が高かった事例がある。あるいは,税理士の機転で,社長が亡くなる直前に退職金を支払うことで,会社の評価を落として相続対策を無事行えた事例がある。要は会社の価値が高く評価される場合には遺産分割でも,税金でも出て行くお金が大きくなって大変だということになる。

 相続税評価通達では年商や従業員数などで大会社,中会社,小会社に分け,大会社には類似業種比準価格,小会社には純資産方式を採用している。しかし,純資産方式というのは不合理なことが多い。中小企業の場合,大部分は譲渡制限株式であるため株式に市場価値はない。純資産方式で株価が計算されても,だからそれを売って税金を払えるかというとそれは不可能に近い。

 会社を承継する者にとってはそれでも会社の資産を得るのだからいいのかもしれない。しかし,夫の死亡を機会に会社から排除され,かつ,株式は相続した妻というようなシチュエーションではどうしようもない。会社の資産が多ければ,税額はめいっぱいつくが,持っている株式はどうしようもないからだ。

 最近は譲渡制限のない株式については一定の要件で物納が認められているが(租税法施行例18条)だが,資産価値があるとして相続税を課したのだから,物納があってもおかしくない。「やれるならおまえ売ってみろ」ということだ。しかし,流通性のない株式については税制上,やはり配慮があってよいと思う。