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№108 登記の役割

中小企業法務 №108 登記の役割

 法律実務では登記が様々場所に登場する。特に注意を要するのは登記をしなければ効力が発生しない場合あることだ。商号を続用して事業譲渡をした場合には債務も引き継いでしまうのだが,引き継がない旨の登記をすれば免責される。社外取締役でも登記をすることによって責任の限度が決まってくる。

 登記の中でもっとも日常的なのが不動産に関わる登記だ。不動産の名義が変わることで権利が移転すると考えられることが多い。市民の生活感覚や取引の実際からすれば名義が変わるというのが所有権移転の重要な基準ということだろう。しかし,法律上は契約の締結によって移転すると考えられている。

 この本当の所有者と名義とのギャップに伴う問題はけっこう多い。例えば,売買代金を払ったけれど登記を置いておいた場合,本当はお父さんのものだが,将来を考えて息子の名義にしておくような場合など,本当の所有者と登記名義とがずれてしまうことがあるのだ。これはもはやシロウトではどうしようもないので是非,専門家に相談してほしい。「登記は放置すれば不利になっていく」という仕組みになっている。

 最近,ある不動産業者に騙された老夫婦の相談を受けた。物件には金融業者の抵当権がついていて,近いうちにはずれるからとりあえず土地数千万円を払ってほしいと持ちかけられたのだ。すでに引っ越したのであるが,案の定,抵当権が実行され,老夫婦は出て行かなければならない。登記よりも先にお金を払えと言ったのであるが,おそらくこれは詐欺だ。これをどうやって解決するかについてはそう簡単ではなく,弁護士にも高い交渉能力が求められる。