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№1678 事業承継,親子でも他人と思え

№1678 事業承継,親子でも他人と思え

 事業承継問題が多くなっている。新経営者が事業を刷新しようとしたところ旧経営者が「そんなはずではない」「伝統が失われる」と争うということはけっして珍しいことではない。大塚家具事件や,ちょっと前の赤福事件は大きな企業の事件だったが,中業企業でも普通にある。

 経営方法の違い,あるいは会長子飼いの部下たちの処遇といった問題のほか,旧経営者がだらしなく会社の金をつかって贅沢三昧をしているような事例も中小企業ではあり,事業承継を契機に問題が顕在化することがある。

 たとえば,昔風になんでも経費でつけて贅沢な生活をしたところ,事業承継に伴ってそれができなくなるような事例だ。新経営者が旧風を改めようとするととたんに自分が経営者だと言い張ってくるような事例もある。

 こうした問題に対応するためには,会社法の原則をきちんと守っておくことが必要不可欠だ。つまり,誰が株主であるか,株主名簿はきちんと整理されているか,株を渡すときに合意はされているのか,日頃から株主総会はきちんとできているのか。こういった,大企業では当たり前の作業が中小企業ではできていない。事業承継を本格的にやろうという時にはきちんと顧問弁護士に相談して万事おいたほうがいい。

 「これからはおまえが経営者だから株式を半分渡しておく」,などと言って一方的に渡す,もらう方もそうですかと言ったなりなにもないということはないだろうか。株主が誰であるかというのは確定申告書にしか書いていないということはないだろうか。登記も書類さえ整えておけばよいように思ってい放置しているかもしれない。

 事業承継にで問題になる事例は,新社長が経営を初めて,2年から3年ぐらいであることが多い。最初はがまんしていた旧社長も,もうがまんができなくなり,あれは株を渡したんじゃない。名ばかりの株主で自分が支配権があるんだなどと言い出すことは珍しいことではない。

 もちろん,逆もある。経営を渡してみたけれど新社長が能力がなうまくいかない場合だ。しかし,これは親子の紛争というよりは,M&Aにかかわる問題であることが多い。

 ともかく,親子でも他人と思え,きちんと法律通りやっておくことが肝要で,弁護士,特に顧問弁護士とはよく協議しておくことが必要だ。もっとも,弁護士の中にはこうした会社法上の血みどろの戦いを経験していない弁護士もいるので,そういした弁護士ではちょっと対応が難しいかもしれない。

 ※  写真はサンフランシスコの町並み

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