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№1586 「木箱屋の物語」:事業の壁を乗り越える楽しみ

№1586 「木箱屋の物語」:事業の壁を乗り越える楽しみ

 昨日は私が所属する愛知中小企業家同友会の集まりがあった。使い捨ての木製箱を量産販売する会社だ。量産と行っても一つ一つが手作りなのでそれほど多いわけではない。木の素材であることから紙と違った豪華さや手作り感がある点で差別化を図っている。

 すぐれたデザイン力や箱の加工技術などをアピールして高級おせち料理の箱であるとか,記念品の箱であるとかも製造している。10万円もするおせち料理は箱もそれなりのものでなければならない。箱はホテルからも注文があるということだ。付加価値が高く儲かるのだが,効果はそれだけではない。このすぐれたデザイン,高級品をアピールすることによって,普通のお弁当箱などの商品の注文も増えている。

 この会社は一次売上が低迷していた時期があったが,あるときからこの「高級品」をデザインし,展示会など出展したところ顧客の引き合いが増えていったらしい。同時にそれまで単に作っていたというレベルから,個々の商品についての原価の計算もきちんと行うようになったということだ。

 売上などをお聞きすると,確かに2008年までは低迷の一途だったのが,企業改革を実施したこの時期からはV字回復となっている。2015年は実に売上は2倍となっている。それだけではない。個々の商品の利益率や商品力を細かに判断するようになったことから,商品の利益率も向上しているという。

 使い捨て木箱とういニッチな領域でいかに生き残るか,ライバルの「紙」にいかに打ち勝つかの苦悩があった。木箱は高級感,手作り感といった「紙」にない特性がある。しかし量産で使い捨てという「安さ」も調和させなければならない。この事業者の選択は「紙」とぶつかり合うのでは無く,「紙」にない特性を生かして競争回避の戦略をとってニッチを獲得していった。