名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№1144 基本契約書 3つの役割

№1144 基本契約書 3つの役割

1. 基本契約の3つの役割

 基本契約書について顧問先からよく相談を受ける。
 取引関係が長期にわたる場合、たくさんの取引があうんの呼吸で行われていく。ビジネスはスピードが勝負なので個々の取引では機械的に簡単に処理されることが必要だ。しかし、いざというときのルールは必要だ。そのルールが基本契約となる。基本契約の内容は私の経験上、次の3点が主なものではないだろうか。

① 個別取引の契約内容の確定
② 非常時における取り扱いルール
③ 利益の分配のルールに大別される。

 これらはどのような業態にも共通するものだが、基本契約は日常取引の基本的ルールを決めるものであるため、業態の実情が色濃く反映するため、一口に基本契約と言っても内容は大きく異なる。当事務所が取り扱っている基本契約でも業態が違うと大きく違う。

2. 個別取引の契約内容の確定

 部品製造業の場合、継続的取引契約の典型的な事例となる。
 事業者はジャストインタイムで受注するため、発注、受注、納入、支払のかなりの部分が電子情報でやりとりされる。中小企業の場合、それでもまだ発注書、納品書などは紙媒体が多いかも知れない。紙媒体は誰でも見ることができるという一覧性や、「残る」という点での永続性にすぐれているため、そう簡単には無くならない。

 この場合、基本契約書は個々の取引の成立時期(普通は注文書が到着した時期)、納品の時期(検品)、返品、所有権の移転時期、決裁時期などが決められる。製品によっては原材料が商品の品質を決めることもあるため、どこか原料を供給するかも大きな問題となる。あるいは梱包の責任を誰がどのように負担するかなども決められていく。

 この部分はトラブルに備えるというよりは、契約当事者の連携をいかにスムースに行うかが主眼となっている。製造業ではジャストインタイムが生命線であるため、取引にかかわる契約の確実性を維持しつつ、事務的なエネルギーをいかに小さくするかが課題となる。例えば、梱包のミスにより商品に傷があった場合、通常製造側、届ける側の責任で処理される。しかし、特殊製品で梱包の指導が発注側の責任で行われる場合は別の考慮も可能となる。
 
 なお、ソフトウェアー開発関連の基本契約の場合、漠然としたコンセプトから徐々に具体化し、最後まで商品が確定していかないという特徴がある。こうした場合の基本契約はまた特殊だ。

(続く)