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№504 社員は仲間

№504 社員は仲間
 ドラッカー「マネジメントⅡ」も284ページまできた。
 ドラッカーの描く組織像を一言で表すのは難しい。一言で言うならば働き手に権限と責任を持たせる職場ということになろうか。
 
 ドラッカーは「誰もが、自分の業務とチームへの責任、組織全体の成果や業績への責任、職場コミュニティの社会的任務への責任を引き受ける」組織が大切だという。そこに所属する職員をドラッカーは "The responsible worker" と呼ぶ。責任を引き受ける労働者という訳になるが、もっと積極的だ。訳では「責任意識の強い働き手」としているが、意欲的に責任を引き受ける能動的労働者という感じだろう。
 
 マネジメントを実行する上で職場全体のデザインは不可欠だ。各業務部門があり、所属する者たちの権限は明確でなければならない。それでいて、職場はコミュニティとして機能しなければならない。各部門では自分たちの最も効率の良い、質の高い職場作りに向けて小さな話し合いが行われ、自分たちで仕事のあり方が決められていく。社員相互は「仲間」となる。それが、上下関係のある上司との関係にあってもそうだ。
 
 もちろん、各部門の権限や上下関係は責任者は明確である。職場のマネージャーは組織で割り当てられた役割が機能するよう、職場コミュニティーを維持することだ。
 
 これを表現することは難しい。ドラッカー自身、著書ではいくつか成功例を引用しながら説明している。これは人の体にたとえるとわかりやすいかも知れない。
 
 人体はいくつかの機能に分かれている。全体の機能を統合しているのは言うまでなく脳だ。しかし、脳が全てを判断しているかというとそうでもない。
 
 足は歩く役割を引き受けている。これは多くの反射的動作で構成されている。右足をあげた時に、つま先が前に移動するようにできあがっている。反射は大脳のレベルで意識的に操作されているわけではない。足と限られた中枢で状況に応じて自動的に判断している。
 
 体のバランスは三半規管が担っているが、足と三半規管、小脳の関係ができあがり判断している。足に傷ができれば、その修復に向けて皮膚の組織が動き出す。かさぶたができあがり、皮膚の組織は回復するようにできている。それは皮膚の組織が独自の判断をして、修復の責任を意欲的に引き受けている。これらを全て、大脳が意識的に引き受けることは絶対にできない。
 
 このように体は多数の部門が自分たちの判断で動き、意欲的に責任を引き受けている。それでいて全体は統合されている。特別なときには大脳が登場して解決する。大きな山を越えるために険しい坂道を上らなければならない。そのためのプランは大脳が立てるだろう。各組織の最大効率化が図られ、その集積が行われた場合が機能的でよい体ということになる。しかし、体全体のプランは別のところで作られていく。体がどのような人生を歩いていくかは大脳が決めていく。