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№503 大丈夫?営業秘密の管理

№503 大丈夫?営業秘密の管理
 営業秘密の管理は大丈夫だろうか。
 
 顧客情報は会社の営業にとっては大切な財産だ。長年にわたる積み上げの成果とも言える。顧客情報は会社の営業秘密として管理される必要がある。しかし、実際には簡単ではない。顧客情報は営業マン個人にとって自己のキャリアの証でもあるから、営業マン個人の財産にもなり得る。
 
 事案は不動産仲介業者の元従業員が、同業者に転職したという事例だ。
 いろいろ、ややこしい論点があるが、マンション所有者の情報を元従業員が盗み取ったと言えるかどうかが争点となった。マンション所有者が誰であるか、電話番号はどうなっているかについては、情報を買い取ったりした上で、独自に情報を整理する必要がある。このような整理自体に手間がかかる。
 
 不動産仲介業者は秘密情報の使用の差し止めを求めて提訴した。
 
 判決は
① 所有者情報自体は市販している情報の組み合わせだから秘密性はない。しかし、情報の組み合わせはオリジナルなものだから秘密情報になりうるとした。
② しかし、この「組み合わせ」が盗まれたとは評価できない。
 として、請求を認めなかった(東京地裁H21.11.27判時2072号)。
 
 不正競争防止法2条6項は営業秘密を保護し、同法は損害賠償請求のほか、使用差し止めなども認めている。
 この場合の秘密とは①秘密管理性、②有用性、③非公知性が要件となる。
 
 営業秘密は営業秘密として管理されなければ法によって保護されない。それは、日頃から社員に対して、秘密であると教育する必要がある。また、保管場所も明確にし、誰でもアクセスできないようにする必要がある。アクセス後の管理も厳重にして、一定期間以上保存しないとか、持ち帰らないとか、いろいろなルールを決めておく必要がある。
 
 本件事例は、「情報の組み合わせ」にオリジナリティ(非公知性)を認めつつ、その組み合わせが流出したことが立証できないとした事例である。何を保護したいかについては顧問弁護士とよく話し合っておく必要があるし、営業秘密の保護としてきちっとしたルールがあるかについても顧問弁護士と話し合っておくのがよいのではないかと思う。
 
■ 経産省は「営業秘密管理指針(改訂版)」を公表している。
  http://www.meti.go.jp/press/20100409006/20100409006.html