№429 子供フェンスに首が挟まり死亡した事例
中小企業は様々工夫して、すきまに入り込んで商品を売却していく。そんな中でも、製品の安全性へのチェックを怠ってはならない。トヨタプリウスのブレーキ問題の教訓は大企業の問題ではない。むしろ、体制が不備な中小企業にとって重要な教訓なのだ。
この事件は、乳幼児用防護柵(ベビーガード)に幼児の首が挟まって窒息した。
ベビーガードは子供が危険エリアに行かないようにするための簡単な柵だ。本件は2階の部屋と階段踊り場との境に設置されてあった。子供はベビーガードの最上部、V字型になっている部分に首が挟まって死亡した(神戸地尼崎支部s.54.3.23判時942,87頁)。
両親はベビーガードの構造上の欠陥、使用方法に適切な説明がなかったとして、メーカーに損害賠償請求した。この事件は次の理由でメーカーが勝訴した。
① 構造の欠陥について
「その構造は・・・極めて単純なもので特別の技術や知識を要せず、」V字型部分の高さ、構造は「外観上は明白に認識することができる」として、一般利用者は・・・安全に設置使用できる。」として、構造の欠陥はないとした。
② 注意の表示について
「・・・表示することが好ましいとはいえ、本件ベビーガードの設置使用方法は千差万別であるところ、・・・その設置使用につき一般の利用者が容易に気付き得ない危険が内在するものと認めるに至らず」それに気づかなかったとしても被告の過失とは言えないとした。
この判決は製造物責任についてまだ議論が進んでいない時期の事例であった。製造者の責任について立証責任は消費者側にあったためにこのような結論になった可能性がある。しかし、PL法ができあがり、製造物責任の議論が進んだ今日で同じ判決が維持されるとは限らない。
この事例は、「内在する」危険について、不断に注意を怠らないというのが教訓だろう。製造者は常に利用するものの使い勝手をモニターしなければならない。それは、商品がいかに売れるかという点で重要であるばかりでなく、いかに安全を確保するかという点でも重要なのだ。
あなたの会社は,普段から最終ユーザーの声を聞いているだろうか。声を聞くための専門化されたシステム,技術は磨かれているだろうか。