名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

名古屋,豊橋,東海三県中小企業法務を行っています。

№2443 店内転倒で賠償責任を負うことがあります

店舗内の個室トイレに入室しようとした67歳の女性がトイレの段差に足を取られ,転倒して骨折などした事例で,店舗運営者に管理責任が問われた事例がある(横浜地裁R4.1.18,判時2520,53頁)。店舗経営者は転倒防止のために注意が必要だ。

 

施設管理責任という言葉があります

店舗での事故ということになると,店舗という施設管理責任が問われる。民法717条は施設の管理に落ち度がある場合には,「工作物責任」といって,工作物(トイレなどの施設も含む)の管理に欠陥がある場合には賠償責任を認める。管理者は「損害発生を防止する注意をした」ことを立証しないと責任を負うことになる。

 

トイレの入り口付近に10cm高い段差があった

さて,問題の事例だが,トイレの扉は内側に押して開く構造になっていた。半開き状態で中に入らざるを得ない状態だった。トイレの床は10cm高くなる段差があった。なぜ10cmの高さがあったか不明だが,女性はこれにつまづき転倒し,骨折するという大事故となった。

 

判例は老人などが利用することも考えろと判断しています

内向きの扉で入りづらく床に注意が向きにくく,便意を催して注意が便器に向きがちである人々に対する配慮がないこと,床の色も見分けがつきにくい点が指摘されている。また,店舗全体はスロープがつけられるなどバリアフリー構造になっており,トイレもまた安全な構造だろうと思われる店内になっていた。視野の狭い老人も訪れることがあるであろうから,店舗としてはそうした人々に向けた注意も必要だと判断されている。

 

転倒では重傷となる場合もあるので注意を要します

裁判では860万円の請求に対して,227万円が認容されている。老人の場合,骨折ではすまない場合があるから,経営者としては注意が必要だ。教訓は次の通り。

 

① バリアフリーを心がけ,そもそも段差をなくすこと
② 段差がある場合は段差がはっきりわかるよう色分けすること
③ 段差に対しては注意を呼びかける張り紙などをすること
④ 段差に対して,店員がひとこと注意をするよう心がけること

 

なお,こうした施設管理責任の事例が多く,カウンター前がぬれていて足を滑らして転倒し,骨折した被害者の賠償請求を認めた事例もある。