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№362 管理職にご用心

№362 管理職にご用心
 労働時間、休憩および休日に関する労働基準法の規定は、管理職には適用除外となっている。だから、管理職には超過勤務手当などが支払われないことがほとんどである。その代わり、管理職手当が支払われていることが多い。

 管理職というのは「監督若しくは管理の地位にある者」という意味だ。当初はライン管理職などを想定していたらしいが、現在では多様に広がっている。

 管理職の内容は労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的立場にある者の意味とされている。かつては、本当に管理していて、一般職の人と仕事の内容が明らかにちがっていた。しかし、いつだったか、管理職も通常の業務するべきだ、管理職だからと言って甘えてはいけないというような議論が出始めて、管理職もいろいろ仕事をするようになった。

 これが、誤った方向に応用されはじめ、いつのまにか、管理職とは名ばかりの職務が増えてきている。中小企業の場合、法律の厳密な適用がなかなかできないため、どうしても世間がどのようにしているかを基準にせざる得ない。マックの店長が管理職なら、うちも管理職だということで、店長を管理職にして手当を支給し、残業代はないよというところが増えている。

 管理職は「経営者と一体的立場」にあるもので、けっこう要件が厳格だ。時間管理を受けているファミリーレストランの店長やカラオケ店の店長は「管理監督者」とは言えない。支店長代理は管理監督者ではないという判例もある(静岡銀行事件)。学習塾の営業課長も管理監督者ではないという判例もある(育英舎事件)。

 管理職は労働時間が自由だから職務の形態として出退勤の自由があるか(時間内で担当する仕事があると管理職とはいいがたくなる)、部下の人事や考課に関与しているか、事業の機密事項に関わっているか、管理職手当が適切な金額となっているか、その他管理職としてふさわしい待遇があるか、など総合して判断されている。

 中小企業の場合、けっこういいかげんにしているところがある。「私は名ばかり管理職だった。残業代をきちっと払ってください。」と過去2年間にさかのぼって突然社員に請求されることがある。そもれ数百万円の請求をされることはまれなことではない。

 結局、これは就業規則、労働条件をきちっと定めていなかったつけや、社員との人間関係をきちっと作れなかったつけのようなもので、日頃から「正しく」経営する姿勢あったかどうかの問題である。