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№361 長期貸付けのからくり

№361 長期貸付けのからくり
 消費者金融被害というのはどのようなものだろうか。

 サラ金の借金は日常生活の不足分を補うためのものだ。借り入れが新たな利益を生み出すわけではない。そのため、翌月にはまた足りなくなってしまう。こうして、借金が生活に無くてはならないものになってしまう。

 多重債務者はいつの間にか借金をまるで預金と勘違いし、いつでも引き出せるお金と思うようになる。あるとき、病気、失業などでたちどころに返済できなくなり、破産にいたる。

 業者は借金を生活の一部にさせることにより、長く金利を得ていくのである。実際には借金など無くたって生活できるはずだ。

 こうしたことは、中小企業者の社長にとって身につまされる話ではないだろうか。当面の運転資金を借り入れる。運転資金は利益の拡大に結びつかないために次の借金を考えなければならない。

 借り入れは長期、固定化して借金が事業の一部になってしまう。いつのまにか、借金は普通にあるものだと考えるようになってしまう。銀行は借金を長期固定化させることにより、日常的に利益を得ていく。事業者は銀行との信頼関係を作ると称して、貸し付けますという銀行の甘い言葉に乗ってしまう。

 本当は長期の借り入れなどいらない。銀行は経営戦略として借金を固定させ、金利を得ていく。しかし、何か大きな出来事が起こって、本当に借金が必要なときには手のひらを返したように突然融資を打ち切ってくる。

 本当のからくりは、経営が順調に伸びているときに行われる。創業当初、経営が当たり、倍々に売り上げが伸びていくことは少なくない。このときに、借金は短期から長期に組み替えられる。経営者は自信満々だし、それまで経験のない多額の借金にかえって自分の実力だと妙な錯覚に陥る。銀行が会社の実力を認めたのだと有頂天になってしまうのだ。

 経営はある時期、成長が止まる。気づいたときには2億円から4億円の借金が日常的に存在するようになってしまう。そして、不況があって突然融資が打ち切られ、初めて銀行の戦略に気づき、「はめられた」と銀行を恨む。