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№159 中国物権法

中小企業法務 №159 中国物権法
 
 中国は改革開放路線が進んで以来,契約法の整備が進められている。その変化はめまぐるしく,日々変化を遂げている。
 
 この変化の激しい中,なかなか成立しなかったのが中国物権法だ。中国物権法は2002年から本格審議が始まり,2007年3月,5年をかけて成立をみた。起草が始まったのが1993年ころだというから苦節14年の苦労ということになる。

 他の私法,例えば契約法に比較すると格段に時間がかかったと言える。これはもちろん,私的所有を認めるかどうかという社会主義の根幹にかかわる問題があるからである。社会主義革命を経て,中国は全ての土地を国有化した。1950年代には人民公社という中国固有の公有制度もできあがった。これを変えるといのであるからそれは並大抵のことではなかっただろう。

 中国物権法は、第1編:総則、第2編:所有権、第3編:用益物権、第4編:担保物権、第5編:占有の全5編からなっている。「物権」というのは日本と同じだ。所有権から始まる構成もよく似ている。物権の概念もほぼ同じだ。

 しかし,物権法では「国は、社会主義初級段階にあっては、公有制を主とし、多種類の所有制経済が共同で発展する基本経済制度を堅持する。」と考えており,原則として国有を宣言している点はもとのままだ。土地は原則として国もしくは集団所有である。

 このように土地の所有権は国に留保されているのが原則である。その結果,建物を建てようというときには土地使用権を獲得することになる。その場合,国有土地使用権,集団土地使用権を取得することになる。直接獲得する方法を払い下げ使用権と言い,これは一種の許可による使用権の獲得である。もう一つは他から購入することによって獲得する譲渡による使用権の獲得である。

 いろいろあげたらきりがないが,要するに何でも許可が必要である状態は余り変わりはない。自由経済を発展させようとすると,自由に行動できることが必要であるが,何でも許可ということになると不自由きわまりない。このようなやり方は限界があるからだんだん変えていくことだろう。

 中国物権法では「国家、集団及び私人の物権並びにその他の権利者の物権は法律の保護を受け、いかなる組織及び個人も、これを侵犯してはならない。」と定めており,ひとたび所有等の権利が認められれば,国とも平等の立場で保護が図られる点,大きな前進といえる。国と私人とが対等の立場で保護されるというのは自由の第一歩だ。自由主義革命も王権からブルジョアジーたちが国からの自由を求めて起こった。