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№44 赤福の教訓 その6(社長の教育)

コンプライアンスで重要なことはトップの決断と,トップの決断が会社全体に反映するシステムにあることは言うまでもない。企業コンプライアンス体制については大和銀行ニューヨーク支店損失事件が有名だ。これは米国債(米国財務省証券)を簿外取引により、11億ドルの損失を与えた事例であるが,不正行為を防止するための内部統制システムを構築すべき善管注意義務取締役による法令遵守体制構築の法的義務はあるとした。
 コンプライアンス体制は企業理念の構築から始まり,倫理方針の策定,コンプライアンス・マニュアルの作成,実施計画といった戦略を作成する。内部通報制度なども必要だろうし,外部監査委員会の設置も必要だろう。社長,幹部,社員の教育も考えなければならない。大企業の場合は法務部などが重にになって専門部署を置き体制を組んでいる。
 中小企業の場合,複雑な体制を組むことはできないし,有益でもない。体制はその企業にとって必要かつ十分な内容を検討することになるだろう。赤福の場合,コンプライアンス室や内部監査室を設けた。法令についてのリサーチを行い,社員教育も実施しているようだ。こうした中小企業向けのコンプライアンス体制を考える上では赤福のケースは非常に有益なのだ。
 ところで,赤福の報告書を読んで私としては随分勉強になった。足りないものがあると言えば社長の教育をどうするかという点だろう。今回の事件で社長は多くことを学んだことは必定である。同族意識の払拭が報告書では課題となっているが,「同族ボケ」はどのように克服されるべきであろうか。私は社長の教育は社長同士の交流でしか涵養できないのではないかという気がする。異種業種と積極的に交流し,コンプライアンスについての社会の到達点をよく理解していくべきだろう。こうした企業家どうしが涵養する組織の役割は大きい。