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№2330 消費者契約法による不動産売買解除

№2330 消費者契約法による不動産売買解除

1億円近い売買が解除された
 不動産売買は高額な取引になるが,消費者契約法で取り消された事例がある。土地代金は9778万円とかなり高額だ。

問題は緑化率30%無かったことだった
 この事件の主な争点は,本件不動産が名古屋市が定める緑化率が不足しているというものだ。名古屋市風致地区緑化条例によると,緑化率30%を確保しなければならなかった。売主はこれを芝生の庭で確保するという届出をしていたが,実際にはデッキテラスを作ってしまった。そこで条例に違反した建物,違法な不動産を買わされたとして売買契約を解除した。

30万円程度で緑化率は回復できたのに
 緑化率を確保できなかったが,別の場所に低木を植えるなどすれば回復できる。その金額は30万円程度だったということなので,そのために1億円近い不動産売買を取り消すのはいかにもバランスがとれない。
 実際のところは,売買当事者間,もしくは仲介業者との間で何かトラブルがあったかもしれない。裁判では買主が近所とうまくいかなかったという主張も見られる。
品質に誤解がある場合の法律問題
 ともかく,買ったものが実際と違った場合,契約を解除する方法には次のものがある。
  ① 錯誤 民法では誤解が重大な場合には契約は無効とされる。
  ② 瑕疵担保責任 商品に欠陥があって目的を達しない場合は契約を解除できる。
  ③ 消費者契約法 不利な事実を故意に告げない場合に契約を解除できる

地裁と高裁で判断が分かれた
 一審,二審とも錯誤や瑕疵担保責任については否定した。わずか30万円のことであって契約の重要な部分ではないから契約解消させる訳にはいかないという判断だ。しかし,消費者契約法は判断が分かれた(名古屋地裁H29.3.22,名古屋高裁H.30.5.30判決,判時55頁)。

判断の分かれ目は緑化率不足を知っていたかどうかだった
 判断の違いは緑化率が足りないことを,売主が知っていたか,忘れていたかという点にある。消費者契約法4条2項は「故意又は重大な過失」により重要事項を告げず,誤信させた場合には契約を解除できると定めている。二審は故意に告げなかったと認定し,解除を認めたのだ。

高裁の判断はすわりが悪い
 しかし,わずか30万円で緑化率を回復できる程度の問題で,契約解除を認め1億円近い代金の返還を求めるのはいかにも座りが悪い。裁判官が解除を認めてもいいかもしれないというような事情が外にもあったかもしれない。

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