№2310 幸せって何だろう
経済よりも心の豊かさが大切だ
1976年,非同盟諸国首脳会議でブータン国王は “Gross National Happiness (GNH) is more important than Gross National Product ” 「国民総生産量より国民総幸福量の方が大切だ」と述べた。今では幸福の国ブータンとして国際的に注目を浴びるに至っている。GNPやGDPは単なる物の豊かさでしかなく,心の豊かさは示していない。
ブータンでGNHが本格化し始めたのは1990年代からのようで,2008年憲法ではGNHの増大を追求することが明記されている(9条2項)。最近の第10次5カ年計画の中ではさらに詳細なものになり,理念は具体的政策に結びつけられるようになったようだ。
ブータン人は日本人そっくり
ブータン人の顔は日本人そっくりの「平ぺったい族」だ。米文化もあるし,民族衣装(キラとゴ)は日本の着物によく似ている。ブータンはチベット仏教を国教とし,仏教はブータンの人々に深く根ざしている。輪廻転生の思想があり,功徳を積めば次の世ではより幸福に生まれ変わることができる。お金は貯めても次の世には持って行けないが善行は来世に引き継がれていく,これは日本人にもなじみのある発想だ。
ブータンの道徳教育
① 因果応報:よい種を蒔くとよい収穫が得られる
② 生命の尊厳とその有限性(無常)の理解
③ 相互信頼と相互義務
環境関係でもブータンはすぐれた政策を持っているようだ
仏教では生きとし生けるものは輪廻転生でむずばれ,「縁起」によって関係づけられている。万物はからみあった天の網のような関係だ。この仏教的価値観で生態系をながめ大宇宙の中で平等な仲間として眺めることができる。「山川草木国土皆悉成仏」という仏教思想は政策として実施されている。
たとえば,ポブジカ谷ではオグロヅルの越冬地ではツルが電線にひっかかってはいけないという理由で住民らは長く電気を利用しなかった。発電は地域ごとに行い小さな単位の持続社会を作ろうとしている。
本当の幸せってなんだろう
何が幸せで何が幸せでないか本当はわからない。人と人が仏教的な慈悲の中で関係を作り,自然とも調和して生きていく社会というのは普通に考えると幸福なことではないだろうか。
私は宮沢賢治の世界に深く共感しているが,彼の価値観は深く仏教に根ざしていた。彼は心穏やかにし,いつも自然と対話し,人のために尽くし,そういう世界に本当の幸福があると言っていた。きつねの幻灯会に招待されればみんなうれしいし,そんな世界に住めれば幸福なことだと思うにちがいない。仏教国ブータンの国民の90%が幸せを感じるのもわかる気がする。
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