№2311 中国の経営者たち
中国で隆盛する稲盛哲学
稲盛和夫氏が塾長を務める盛和塾は世界各地にあり,中国にもある。しかも,1万4000人の塾生のうち7000人が中国人になっているそうだ。しかも,私が知る限りでも中国の塾生の企業規模は桁違いに大きい。従業員1万人とか,2万人とか普通にいる感じだ。なんかだか「史記」とか「三国志」とかの世界のようだ。
稲盛経営哲学も中国的だ
稲盛経営哲学は儒教や仏教的な要素が強い。かつて拝金主義的であった中国人経営者も企業が持続し,成長するにつれて経営哲学を求めるようになったということかもしれない。中国人の経営者の報告を読んでいると稲盛哲学と儒教,仏教ばかりでなく中国の古典を重ね合わせて論じられていることも少なくない。さらに,彼らは子供の頃からマルクスレーニン主義の教育も受けているので,稲盛経営哲学の解釈も独特だ。
中国の盛和塾生の報告となっていた。中国の塾生の報告は日本の報告と違ったところがあって興味深かった。
■ 曹 岫雲氏
私は,稲盛哲学の特徴を四つに分けて考えています。質素,実践,道徳,弁証です。弁証というような言葉はいかにも中国らしい。
質素
「稲盛哲学にはわかりづらい哲学用語は存在しません。奥深い内容がわかりやすい言葉で説かれ,人々を感動させ,人の心が持つ力を引き出します。」
実践性
「氏の哲学は,氏自ら実践したものであり,・・・経営の実践が哲学を絶えず富ませていきます。・・・実践から理論を生み出し,その理論をさらに実践していき,何度も循環させていく。こうすることで実践と理論,経営と哲学が完全に一体となり,ハイレベルなバランスを得るに至っているのです。」
道徳性
「稲盛哲学は道徳を哲学に入れ込み,『人間として何が正しいか』つまり『利他の心』という考え方,判断,行動を稲盛哲学の中核に据えています。」道徳との哲学の融合は「他の哲学と比べても極めて稀なものです。」
弁証性
「稲盛哲学は物事の両極端を持ち合わせることを強く訴えています。利己と利他,大善と小善,大胆と慎重,慈悲と闘争心,大家族主義と市場競争主義などです。・・・この両者のバランスは高いレベルで保たれなければなりません。」
中国は伝統的に個人に思想を代表させる傾向が強いように思う
老子,孔子,墨子はそうだし,兵法も孫子が代表している。三国志の義人,関羽は神様になって信仰の対象になっている。マルクス主義,毛沢東主義もそうだし,鄧小平なども企業家の中には部屋に写真を飾って拝礼している人もいる。個人を崇敬するという傾向は日本より強いかもしれない。
一方で,すぐれた海外の思想を取り入れることに貪欲な中国人たちは,いろいろな形で解釈しなおし,ただ崇拝するのではなく,それなりに客観化しているようにも見える。この当たりが,中国的だ。
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