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№2267 ビュートゾルフ(Buurtzorg)

№2267 ビュートゾルフ(Buurtzorg)

 ティール組織」(英治出版)ではオランダの訪問看護を業務とするビュートゾルフがしばしば紹介されている。

管理型巨大組織と人間性の喪失
 オランダの看護業界は徐々に巨大化し,中央管理型企業が登場した。
訪問看護」という商品は細分化され,看護師たちは厳しくスケジュール管理された。静脈注射は10分,入浴は15分,傷の手当ては10分という具体だ。組織内部では「直属の部下から報告内容を管理し,予算との乖離に目を光らせ,」,「点検し」「仕事のやり方を変更する場合には,関連する管理職の判断を仰」ぐという状況だった

非管理型組織と人間性の回復
 これに対し,ビュートゾルフは組織を10人から12人の単位の分け,各単位は訪問看護の全ての業務を担当する。どの患者を何人受け持つかも単位が決める。チーム内にはリーダーはいない。全ては単位できめる。その結果,特定の看護師が特定の患者に責任を持ち,患者は人として扱われる。看護師たちは専門家として生きがいを見いだすことができるようになった。

非管理型組織,ビュートゾルフの成功
 ビュートゾルフは発足以来7年間で10名の組織から7000名の組織となり,圧倒的な高水準のケアを実現している。また,オランダで最も働きやすい職場に選ばれている。

ビュートゾルフが提起している問題
 確かに,訪問看護が単なる「注射」「リハビリ」といった個別商品を訪問販売する業務であれば,管理型組織でもよいかもしれない。しかし,訪問看護は「看護」という,看護師と患者の「関係」を提供する業務だ。ビュートゾルフは「看護」という事業の原点に戻ったサービスの提供を始めたにすぎないとも言える。

 しかし,統制型にしろ組織を拡大してさらに分業による高い専門性,大規模化による低コストの実現という要求もあったはずだ。統制型組織が拡大していったにはそれなりの必然性があったはずだ。

非管理型であっても,事業単位の相互連係が図られている
 ビュートゾルフは米国で開発された包括的ケアシステムを取り入れ,患者にとって役に立ったという成果は何であるかを客観的に評価するシステムを作り上げている。また,事業単位相互の経験や知識を交流するためのICTシステムを開発している。地域単位にコーチという助言者を設けたり,専門家からの助言を受けることができるシステムもある。

ビュートゾルフの教訓
 ビュートゾルフでは組織の規模が大きくなることのメリットも併せて実現したというところに重要な意味があるように思う。つまり,看護師が患者と全人格的な包括的な関係は本来小規模組織が向いている。

 しかし,一方で規模が拡大することによるメリットも組織的に実現するという難しい作業をやってのけているのだろう。「患者のために」という理念が明確であることと,サービスの質を維持するための看護師教育プログラムやICTシステム,よい看護を目指そう情報を取り入れようとする文化を創り上げている点に得られるべき教訓があるように思う。

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