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№1987 会社を辞めていく君へ

№1987 会社を辞めていく君へ

社長の悩み
 社員が辞めるのは経営者としてはかなりつらい。時には辞めてくれて良かった思うことがあるかもしれないが、一般的にはつらい。特に長く勤めている社員がやめるのはいやな気持ちだろう。こうした社長の悩みはある種の敗北感もあり社長にしか分からない。

 私が所属する中小企業家同友会という団体には「労使見解」というのものがある。経営者は経営に責任を持ち、労働者は労務の提供に責任を持つ、双方には共通の利益に向けた対等なパートナーシップがあるという考え方だ。

 きれい事を言うなという声もよく聞かれるが、組織には理想型というのが必要で、理想を求めて相互に努力することが大切だ。理想型になることはあり得ないが理想型に近づくことはできる。逆説的だが理想型になろうということそのものが実は理想型の姿だったりする。

辞めていく社員に対する3つの視点
 社員が辞める場合、それがどのような理由であれ、会社には辞めるだけの理由があったと言うことになる。信頼していた社員が辞める場合、その理由はあまりにも多すぎて訳が分からない。私は辞めていく社員に対して次の3つの点から考えようと思う。

1. 辞めていく社員の限界
  社員自身の性格、根気の無さ、家庭の事情などそもそもの欠点があって会社に耐えられなかったということもあるだろう。会社の文化と個人の価値観の違いということもある。あの社員は収入の問題に敏感だったということもあるだろう。社員の分析は必要だ。

2. 辞められた会社の限界
  社員が辞めていくというのは社員を育てられなかった、会社が上回る魅力を提供できなかったということになる。社長の何気ないけちくさい言葉、しぐさ、厳しい叱責など社長個人に対する強いストレスがあるかもしれない。会社が儲からず、社員の利益が薄いかもしれない。社員が生涯働ける場という会社の未来を示せなかったかもしれない。社員が辞めて、問題点を整理し、それにより会社がよくならなければ経営責任を果たしたことにならない。

3. 社員の成長と社会還元
  ともかくも長く会社におり、会社でキャリアを積んだ社員は社会に貢献できるだけのキャリアを持つことになる。これが社外に出ることは脅威ではあるが、社外に出ることで自社の社会貢献の一つが果たしたとも考えられる。社外に出た社員が、自社の理想を一部でも引き継ぎ、新たな職場で生かしていけば、自社は社会的存在意義を持ったということになる。

  社員が辞めていき、自社のノウハウが他社に利用されることは競争上の脅威だが、ライバルの登場は自社を磨き上げる強い動機にもなる。適切なライバルの存在は自社にとっても自社の業界、自社の市場にとってもよいことだ。

 きれいごとを言うなという声が聞こえそうだが、出て行く社員を恨んだところでいいことはない。

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