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№1883 立地のパラドクス

№1883 立地のパラドクス

 マイケル・ポーターはグローバル時代にあっても、立地の重要性は変わらない、むしろ重要度を増しているという。彼はこれを立地のパラドクスと表現している。

 インターネットや輸送手段が発達し、情報と物との境目が日に日に曖昧になっていく気がする。「物」の価値が厳密に考えられるようになったというべきかもしれない。物の価値のうち情報部分が分離され、情報だけが行き来するような社会が生まれている。たとえば、チケットは今はもう紙媒体は必要ない。QRコードさえあれば、携帯でなんとかなる。

 情報は相互に関連したり、共有したりされている。プラットフォームと呼ばれる情報の集積場所ができたりして、情報の集積場所でコミュニティが生まれたりしている。現実の場所は関係ないかのように見える。南太平洋の島で仕事をしようが、アラスカで仕事をしようが、情報の交流さえできれば場所は問わないとさえ思われるほどだ。

 しかし、こうしたグローバル競争の時代にあっても、現実の立地はなお重要な要素を持つ。フェイスツーフェイスの交流は人間にとってかなり意味があり、ますます重要性を増すという。それはフェイスツーフェイスの交流がイノベーションの源泉となると考えられるからだ。

 グローバルな展開があればあるほど、競争に打ち勝つためには不断のイノベーションが必要とされる。そのためには企業は立地の優位性を最大限利用しなければならないし、自らよって立つ場所が立地として優位を保てるよう働きかけしなければならない。

 マイケル・ポーターはこの立地のパラドクスを説明している。立地の重要性を産業クラスターという考え方によって分析している。これは単なる産業の集積では無く、地域全体が適切に組織化され、マネジメントされ、競争優位の獲得に向かって発展している状況を含んだ意味合いになっている。

 マイケル・ポーターによるとクラスターの優位性はインフラや研究機関、地域における人材の層などの要素や、企業間での前向きな競争、発達した消費者層、関連産業の存在などいろいろな要素に分析できる。さらに、現在でも様々研究者がクラスターの優位性を研究しているようだ。

 その中で特に興味深いのは「スピルオーバー」という考え方だ。これは本来の範囲を超えて効用が及ぶ場合を言うらしい。
 スピルオーバーするのが知識であれば、知識のスピルオーバーとは、特定の企業によって行われた研究開発投資、あるいは技術革新の成果が、そのコストを負担しなかった企業にも波及することなのだそうだ。 産業の集積化により、人材が集まり、情報の流れが円滑になるとさらにこの動きは加速するらしい。

 脳細胞が自分の枝を伸ばしてパートナーとなる脳細胞を見つけ出して新しい記憶やアイディアを作り上げていくのに似ているかな。立地を一つの脳とみれば、クラスターの発達は情報網が向上して、さらに新しいアイディアを創造するのに似ている。

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