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№1844 売買契約における特許の取扱

№1844 売買契約における特許の取扱

 継続的な売買契約を締結する場合、次ような特許にかかわる条項が入っていることがある。この条項には注意を要する。

① 甲(売主)は乙の納入する物品並びにその製造方法及び使用方法が第三者特許権を侵害しないことを保証する。
② 同物品に関して第三者との間で特許権侵害を理由とする紛争が生じた場合、甲の費用と責任でこれを解決し、又は乙に協力し、乙に一切の迷惑をかけないものとし、乙に損害が生じた場合にはその損害を賠償すること。

 こうした特許を含む商品を販売する場合には、あらかじめ特許権者に対して許諾をとっておく必要がある。これは特許にかわらず商標などの他の知的財産権も同様だ。

 一口に許諾と言ってもあいまいなこともある。特許の時期や販売の範囲など正確にしておかなければならない。たとえば、ディズニーなど国際的に通用するような商標の場合、輸出可能かどうかなどきちんとしておかなければならない。

 特許など、知的財産にかかわる問題は特許権者が外国の法人、個人である場合には許諾にあたっても仲介者がはいることが少なくない。この仲介者は意外といいかげんで適当にOKをとりつけることもある。OKであればその根拠にさかのぼる習慣は欲しいところだ。

 平成27年の事件はモデムチップセットにかかわる事件だ。この特許はもともとはFURAND宣言(誰にでも公平かつ適正な価格で特許を提供するとの宣言)だったが、権利者が移転して承継人は宣言していなかった。ソフトバンク社は特許権侵害として2億円のライセンス料を支払うことになっている。

 上記条項からすると、商品提供者は2億円賠償責任が発生してしまう。
 この事件は特許権侵害はなかったためソフトバンク社の支払いについては特許にかかわる条項は当てはめなかった。しかし、上記②に基づく協力義務を怠り、非協力的だったとして商品提供者の落ち度を認めた(H27.12.24 判タ1425号146頁)。そこで、調査費用などの支払う義務があるとしてる。

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