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№1672 企業経営が科学的であるということ

№1672 企業経営が科学的であるということ

 8月号のハーバード・ビジネス・レビューでは「営業」と特集している。ハブスポットのCEO、マーク・ロバージの記事が面白かった。彼は「報酬制度は業績拡大の最大のツールである」と述べている。
 
 ハブスポットはインバウンドによるマーケッティングで急激に業績を伸ばした会社だ。ハブスポットのマーケッティング総合管理ソフトウェアを販売している。
 
  ハブスポットは2006年に2名の共同創業者から始まり、創業7年目で売り上げは1億ドルを突破した。2014年には上場を果たしている。インバウンドというコンセプトがいかに有益なものであったかを物語っているが、今回の記事は急激に業績を伸ばした企業が成長に応じて報酬制度をいかに変化させていったかが焦点となっている。
 
 この報酬制度の設計について、マーク・ロバージは次のようにしめくくっている。
「社内で起きるあらゆることのデータにマネジャーがアクセスできる時代にあって、営業部隊の巧みなマネジメントが、いかにアートよりもサイエンスであるべきだということを解き明かしている。」
 
 当然のことながら企業の発展段階に応じて、企業が求める顧客の層も異なってくる。ハブスポットでは創立当初は「顧客を速やかに獲得し、自社商品が実際に顧客にとってどれほど有益であるかを見極める必要があった。」
 
 「やがて、顧客が100社に拡大し、売り上げが300万ドルに達した。」この「多数の顧客を獲得した段階で、我々は商品の機能や価格が市場の希望に合致するポイントである」「プロダクト/マーケット・フィット」に対してどれくらい進展が見られるかを分析出るようになった。
 
 その後、ハブスポットでは自社にとって最適な顧客とは何か、どのようにすればそのような顧客を維持できるかという課題の探索が始まっている。営業担当者に対してはそのような分析結果に基づいて報酬のあり方が変化し、整備が図られている。
 
 たとえば、当初顧客の解約率を調査してみると営業担当者別によって最高値と最低値との落差が10倍を超えていることが判明している。その上で、解約率の高い担当者の営業内容を分析すると、つまりソフトウェア導入に伴う利益について過剰な期待を抱かせている例が多い分析結果となった。その結果、解約率の高い営業担当者には「期待値」を正確にするよう訓練を施すようにし、解約率を考慮した報酬制度を導入することとした。


 つまり、ここでの「科学性」「サイエンス」ということの意味は、仮説設定の的確性やそれを根拠づけるデータ分析の正確性にある。ハブスポットでは上記の分析に基づいた新たな制度導入により、解約率は劇的に改善したという。
 
 この記事は営業担当者と報酬との関係を描いたものであるが、経営に「科学性」を導入ことの意味をよく表している。経営にとって「事実」とは現場から得られる情報であり、経営にとって「成果」とは顧客の創出、維持に他ならない。現場情報を経営目的に応じて収集し、適正に仮説を立て、仮説を現場情報の変化によって、つまり販売実績によって検証していくという作業となる。

 写真は最近家族旅行で行ったサンフランシスコの坂道 
 
 
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