名古屋・豊橋発,弁護士籠橋の中小企業法務

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№1673 法的紛争の天王山


 企業同士の紛争が生じる場合、確かに戦争に似たところがある。経営権の所在を争ったり、大きな金額の請求がかかったりするような場合には企業家生命にかかわる大問題になる。打つ手も多岐にわたり、刻々と変化する情勢に対して、手を打っていくことになる。
 
 わたくしたちは紛争が生じた場合に、双方の法的筋立ての優劣をまず見ることになる。最終的に裁判になった場合に勝つのはどちらかというのをまずは見立てる。これは単に法律的な理論について、どちらが強いかというだけの問題にとどまらない。
 
仮に負けたとしても後に残るものの大きさや、相手に対するダメージ、こちらの負けても既成事実として獲得できる範囲の大きさなども考慮していく。そして、最終的には何が獲得課題であるかを可能な限り正確に見立てていく。
 
さらに、企業の力量というのも考慮に入れなければならない。法的な筋立てがある程度できていても、戦略についていけない企業も存在するからだ。特に中小企業の場合、情報の収集能力や整理能力に資源を割くことができないため、筋立てとしていいものがあっても、使い切れないこともある。
 
そのうえで、獲得課題を得るための戦略を組み立てていく。
もちろん、双方の弁護士が戦略を作り上げていくため、どこかで大きな衝突が生じる。ここを勝ったら全体として優位を作ることができる場所というものがある。ちょうど「赤壁の戦い」とか、「関ヶ原の合戦」とかいった場合と同じように、裁判所の判断が事件の趨勢を決めてしまうという決定的な瞬間が存在する。
 
この時の立証や、法的理論、判例の調査というものはかなり大変なのだが、もっとも苦しいのは裁判所がどんな考えをもってこの事件に臨んでいるかを推し量り、撤退の必要があるかどうかを見極める作業がしんどい。消極的な意見を述べることは弁護士にとってもっとも簡単なことで、若い弁護士などは常に安全側、保守的に判断していく。自分が責任を負いたくないからだ。
 
裁判所に論争をしかけて、裁判所の判断を引き出していくことになる。
勝つのであれば、判決や決定を取りに行くだろうし、負けるのであれば早々に撤退して、和解に持ち込み取れるだけ取って撤退する。
 
こうした事件では弁護士のチームが作られることが多いのだが、困るのは各弁護士が正確に戦略を理解していなかったり、情勢の緊迫度を見誤ることがある点だ。大きな戦争が、弁護士の小さな無理解、不完全な理解によって作戦上の手違いが起こり、そこからほころびが始まり、最後までそれが尾を引くということはありうることだ。弁護士が共通の意識を持ち続けるという作業がまた難しい作業なのだ.


写真は家族旅行で行ったヨセミテ、すごいところでした。

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