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№1554 契約者の特定,代金の特定

№1554 契約者の特定,代金の特定

 中小企業の取引については契約をきちんと結んでいないことが多い。見積書,発注書だけでやりとりしている例は普通にあるが,中にはそれすらもなく取りかかることがある。特に請負契約などは代金が明確でないことも少なくない。

 また,契約にいろいろ仲介者が介在することもあって,誰が責任者か分からないような契約も存在する。

 こういうあいまいな契約について弁護士はどのように対応しているだろうか。

1. 代金決め方
 原則論から言えば代金が決められていなければ契約として成立していないとみられてしまう。代金は契約の不可欠な要件とされている。しかし,現実問題としては物が引き渡されているのに代金を支払わないというのはあり得ない。また,代金交渉は後ほどということも普通に存在する。

 そこで,通常は時価などを斟酌して代金を決めていく。時価が不明な場合でもかかった費用など必要なコストに相当な利益を加えて売買代金や請負代金を決めていく。

2. 当事者の決め方
  当事者があいまいな契約についても取引の実態に即して事実認定をしていく。
  契約書があれば契約書記載が原則だ。契約書に記載が無くとも事実上契約者として振る舞っている場合には契約者として義務を負担する事がある。つまり,契約締結前の事情を総合考慮して検討していくことになる。

 ① 契約交渉において積極的に関与した者が誰であるか。
 ② 実際に費用を支出している者は誰であるか。
 ③ 契約上の当事者となる動機はあるか。
 ④ 売主において当事者は誰であると考えていたか。
  
3. 共同開発が失敗に終わった事例(東京地裁H26.1.22判時2235号61頁)
  これは,特殊形成機の共同開発をした事例であるが,新しい機械であるために開発代金が決められていなかった。また,韓国企業との取引ということもあったように思われるが,仲介する企業が存在することもあり,発注者が必ずしも明確では無かった。

  共同開発は失敗に終わり,受注者は代金を得られなかった。
  もっとも,従来製品を納入したことから裁判所は従来製品については当事者の見積書などを参酌して売買価格を決めていった。

  当事者についても契約に積極的にかかわっていた別会社(納入先ではない)を当事者として認定した。 
 
 
  


 そうでなくても新製品を共同開発するような場合には先が見えないために,