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№1212 事業譲渡と価格

№1212 事業譲渡と価格
 会社の価値は通常3つの方法がある。実際の裁判の場ではそれぞれのやり方を組み合わせて会社の価値、株価が決められていく。


 こうした会社の価値は公認会計士の先生に鑑定してもらったりするのだが、私の感覚ではこうして計算された会社の価値と、実際にM&Aなどで取引される価格とは異なるように思う。つまり、現実に会社を取引する場合には高めの価格で取引されるような気がする。

 例えば、倒産寸前の会社を売り払って、なんとか経営危機を回避することがある。スポンサーに会社を売却し、その代わりにスポンサーに会社の運営資金を投入してもらうのだ。この場合、倒産寸前まで追い詰められているので、実際には会社の価値は0に等しい。

 実際、株価0円で取引することもめずらしくない。
 しかし、スポンサーがわざわざ資金投入してまで会社を引き取ろうというのであるから、いくら倒産寸前であっても0円というのはおかしいということになる。

 売る側もついさっきまで倒産寸前でもうだめだ、バンザイだ、と悩んでいたくせに、いざ譲るという段になって、我が社が0円で譲られるのに強い抵抗を示す。こういう時、社長は「人に聞いたらもったいないことするな。」と言われたという言葉を必ず口にする。弁護士からすると、今ごろそんなこと言わないでくださいと言いたくなってしまうが、そこはぐっと我慢して、ともかく利益調整に奔走することになる。

 つまり、一般に会社の価値の算出というときに、会社の将来性に対して、十分な価格評価がされていない点に計算上の価値と取引当事者間のギャップのようなものが生まれるような気がする。新しい経営者も自信たっぷりで、古い経営者は能力が無いからもうけられなかったと意識があるため、計算上の価格はそうであっても多少は高めにして会社を買ってもよいと思うところがある。

 実際にM&Aの現場では中々理論通りにはいかないということですね。そもそも、理論がきちんとしているかというのもありますけけどね。