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№1114 うつ病対策と情報収集

№1114 うつ病対策と情報収集
 社員に対するうつ病対策は難しい。明確な検査結果がある訳でもなく、身体部位に何か変化がおこる訳でもない。専ら社員の内面にかかわる問題であるし、プライベートな問題にも踏み込まなければならない。そのため、情報収集はうつ病対応の中で最も重要な課題だ。

1. 採用時
  採用時、メンタルヘルスの問題に踏み込んだ質問は可能だろうか。採用面接とはいえ度が不当にプラバシーに介入する質問は違法となる。常に労働能力の判断のためのものでなければならない。予めそうした質問がありうると応募者に告知するのも一つの方法だ。また、過去の病歴を偽って就職し、実際に再発した場合には労働者には不利に作用することになる。

2. 社員の情報提供義務
  就労能力について社員の報告義務を明確にする必要がある。例えば求職中の療養専念の程度や回復についての報告を求めることが必要だ。こうした報告義務は労働契約の関係からすぐに出るわけではないので就業規則に定めておく必要がある。
  

3. 家族、主治医に対する面接調査など
  こうした情報は個人情報に当たるため、個人情報保護法やプライバシーの権利から言っても本人の同意が必要となる。うつ病などが発症し、休職などの必要や労災問題が生じるような場合、主治医に対して直接面接したり、必要な書面をもらったりする必要が出てくる。また、うつ病から休職後、復職する場合についての診断書の提出であるとか、主治医への調査についても必要となる。その場合の同意書なども求める必要があるし、場合によって就業規則の整備も必要だろう。

4. 受診命令
  いつもと違う社員に対し、健康診断や医師への受診を命じる必要が出てくる。この場合、就業規則を整備して健康診断受診命令などを整備しておく必要がある。また、受診した結果についての報告を得なければならないが、その場合の情報収集の目的などが明示され、その管理もその目的に応じたものとする必要がある。

  以上、お気づきだと思うが、就業規則に定めておくことはかなり重要だ。情報収集については個人情報に関わるため、労働契約から直ちに会社側に情報収集権限がある訳ではない。その労働契約法上のあいまいな部分を補うものが就業規則だ。
  もちろん、就業規則でなんでもできる訳ではない。メンタルな問題は本来規則で解決するのではなく、心で解決する問題だ。